「漠然とした不安」を単純な選択肢に変える

拙著『グッドバイブス ご機嫌な仕事』やこのブログで書いてきたように、「恐れや不安」のない「平安な心」こそが、「いい感じ」や「ひとつ意識」、そして「ご機嫌な仕事」を実現するために不可欠な土台です。

そして私は、「恐れや不安」を手放すために、「意味づけをしない」「過去や未来を思い悩まない」「罪悪感をもたない」などの方法を提案してきました。

これらのメソッドを実践するうえでもっとも重要なポイントは、

「恐れや不安から目をそらさずに、その正体を明らかにしたうえで手放す」

ことです。

ただ、私たちはときに、「何が恐いのかよくわからないけれど、胸がザワザワして仕方ない」といった状態に陥ることがあります。今日は、そんな「漠然とした不安」の対処方法について考えてみようと思います。

「漠然とした不安」を抱いたときは、まず、

「しっかりと向き合わずにスルーしてきた嫌な出来事はないか?」

を探ぐってみます。その際に、次のような分類を意識しながら、自分の心の中をのぞいてみてください。ここでは、仕事かプライベートかは問わず、人生全般を見渡します。

① 近い過去に、自分の希望に反する出来事がなかったか?

今日、もしくはこの2、3日の間に「自分の思いどおりにならなかった出来事」がなかったかをチェックします。誰かのひと言、メールやメッセージの文言、自分が属する組織の決定、上司の采配などがよくある候補です。

何か思い当たるものがあったら、次のことを自問してください。

「その出来事をそのままにしておくことで、何か大きなものを失うか?」

答えが「気持ちはザラつくが、それほど大きなものを失うわけではない」であれば、いまこの瞬間にそのことについて思い悩むのをやめると決意します。

反対に、答えが「失うものは大きい。だから、そのままにしておくことはできない」だとしたら、「その状況を変えるために何ができるか?」を考え、思いついたことをできるだけ速やかに実行します。

どちらを選んだとしても、今後、①に類似する状況から不安を消し去るためには、この2つの選択肢しかないことを胸に刻んで、今後、同じようなシチュエーションに遭遇した際には、時間をかけずにどちらかを選ぶようにします。

② 近い将来に、苦手だ、困難だと感じている出来事はないか?

1週間から1か月後の近い未来に、「できればやりたくない」「その日が来るのが恐い」と感じているような出来事がないかを探ります。

こちらも思い当たるものが見つかったら、次のことを自問してください。

「そのことに対処するために、いま準備する具体的なことはあるか?」

答えが「何もない」だとしたら、いまこの瞬間にそのことについて思い悩むのはやめると決意します。

答えが「準備することはあるけど、なかなか着手できない」なら、次の2つからどちらかをいますぐに選びます。

A:それに着手するのはもっと恐いので、この不安を抱えたまま何もしないでおく
B:この不安を抱えるのはもう嫌なので、恐いかもしれないけれど着手する

こちらも①と同様に、実は単純な選択肢しかないことを受け入れて、今後も、未来についてのあらゆる不安はこのプロセスに則って処理するようにします。

③ 本当は顔を合わせるのも嫌な人が身近にいないか?

朝、目を覚ました瞬間に「ああ、またあの人に会わなければならないのか……」と、今日1日に暗雲が垂れ込めるような気分にさせる人物がいないかを確認します。

そのような人の顔が浮かんだら、あなたには次の2つの選択肢しかないことを認めてください。

A:彼や彼女のことがどうしても赦せない。赦すくらいなら、私はこの嫌な気持ちを抱えているほうがまだマシだ。
B:もうこんな気持ちを抱えて生活するのはこりごりだ。自分がしあわせであるために、彼や彼女を無条件で赦そう。

どちらを選ぶかはあなたの自由です。ただし、Aの「嫌な気持ちを抱えてもいい」を選ぶなら、「漠然とした不安」の中にその「赦せない人」を入れないようにして、もっとはっきり「嫌う!」と意識してください。

Bを選んだ場合は、「どうすればそんなに嫌な人を赦せるか?」が大きな課題となるでしょう。その具体的な方法はバックナンバー「自分の過ちも他人の過ちも罪に変えずにおく」に書きました。ぜひ、再読してみてください。

こちらも①と②と同様に、今後、あなたに「漠然とした不安」を抱かせる嫌な人が現れるたびに、AとBのどちらかを即座に選ぶようにします。

④ 遠い未来の自分が、過酷で救いのない状況に置かれると予測していないか?

「何の取り柄もなく、これといって得意なことも見つからず、仕事もうまくいかずに、最後はお金や地位、大切な家族まで失って、孤独に行き倒れてしまうんじゃないか?」

想像するだけでもゾッとするような悲惨な予測です。そんな思いに襲われそうになったら、次のことを真摯に自問してください。

「これまでの人生でそのような目に遭ったことはあるか?」
「自分はそんな悲惨な状況に陥ることを黙って見過ごすような脳天気な人間か?」
「そんなバカげた妄想を抱くことに、何かメリットはあるのか?」

すべての答えは「NO!」であるはずです。そのことを認めたうえで、バックナンバー「絶対に不変な自分の価値を自信の源泉にする」に書いた、あなた自身がもつ「不変の価値」を思い出してください。

また、同じくバックナンバー「身体は意識の創造を外の世界に表現する道具」で書いたように、そのような妄想を抱かせているのは、あなたの「自我」であることをいつでも忘れないでください。

「漠然とした不安」をもたらす原因は、ほぼ例外なく①から④までの中に潜んでいます。

そのような気持ちに襲われたときは、「漠然」という言葉に惑わされることなく、絡まった糸を1本ずつ解いていくようにとことん具体的にしていけば、すべての悩みや不安は、

「単純な選択肢」

に変えられることに気づくはずです。

Photo by Satoshi Otsuka.