今日は、私たちが陥りがちな無限ループ、「頭の中が不安でいっぱいで、仕事も何も手につかない」という状態からの脱出方法について考えてみようと思います。
なぜそれが無限ループかといえば、何も手につかなければ当然、未着手の事柄が増えていき、それがまた新たな不安の種となり芽となってしまうからです。
そんなとき、私たちは「一瞬でいいから気力を取り戻せたらいいのに」と思います。けれども、そんな気持ちとはうらはらに、悩めば悩むほど私たちのエネルギーは失われていきます。
頭の中のモヤモヤをそのままにして、気合いだけでなんとかしようとがんばっても、やはりうまくはいかないのです。
そこで、「あ、ダメだ。何もする気が起きない……」と感じたときは、けっして焦らずに、この記事に書いたことをひとつずつ実行してみてください。
その最初のステップは、
「妄想の連鎖を断ち切る」
ことです。
おそらく、「頭の中が不安でいっぱい」のあなたは、「いま自分は複数の難問を抱えている」と感じているはずです。それぞれの問題が複雑に絡み合い、どこからどう解いていけばいいか見当もつかない状態です。
ところが、現実にはそのような難問が同時に、しかも手に負えないくらい大量に押し寄せてくることはありません。そう感じてしまうのは、ひとつの問題から別の問題、またさらに別の問題と連想を繰り返し、頭の中でそれらを数珠つなぎにしてしまうからです。
これを私は「妄想の連鎖」と呼んでいます。その様子は次のような感じでしょう。
「仕事でミスをした」→「上司にひどく叱咤された」→「もうこの部署にはいられないかもしれない」→「その前に迷惑をかけた取引先になんと言ってお詫びすればいい?」→「賠償責任なんてことになったどうする?」→「クビになることも覚悟したほうがいいかも」→「この歳で転職できるのか?」→「年収が大幅に下がるかも」→「家のローンはどうする?」→「家族にはなんと言えばいい?」→「2か月後に予定していた旅行はどうなる?」……。
文章で表すとこのような1本の線状になりますが、実際の「妄想の連鎖」は枝分かれを繰り返しながら、さらに混沌を極めていきます。
たとえば、「上司にひどく叱咤された」が「そもそもこんな目に遭っているのは、上司の責任なんじゃないか?」と、怒りや憤りに向かうこともあるでしょう。
あるいは、「この歳で転職できるのか?」から、もっとしっかりキャリアを積んでおかなかった自分を責めたり、そのふがいなさに絶望したりすることもあります。
まずは、これが「頭の中が不安でいっぱい」の正体であることをしっかりと認識してください。次に、あなたもすでに気づいているように、ここまで広がってしまった諸問題を一度に解決する方法などどこにもないことを受け入れてください。
そしてもうひとつ、
「妄想の連鎖の中に登場する事柄には、現実と想像が入り交じっている」
というメカニズムに気づくことが重要です。
これこそが、思い悩む本人にとってはけっして妄想ではなく、すべてが紛れもない現実に見えてしまう原因なのです。
ここで、たったひとつだけ小さな努力をしてください。「頭の中が不安でいっぱい」のときに行うのはキツいと感じるかもしれません。けれども、この一線を超えさえすればかならず一筋の光が見えてきます。
「頭の中に浮かんでいる問題の中で、現実に起こっているのはどれか?」
を見つけるだけです。これで「妄想の連鎖」を断ち切ることができます。
もし「それは考えたくない!」と自分の中に強い抵抗を感じたら、次のことを疑ってみてください。
「いま、自分は悩み続けることに何かのメリットを感じていないか?」
そのメリットとは、たとえば「悩むことでエネルギーを失えば、面倒な問題に向き合わずにすむ」といったものであるはずです。
冒頭に書いたように、それでは「何も手につかない」の無限ループから抜け出すことはできません。自分を本当に楽にするためには、そのような一時しのぎのメリットはすべて手放すしかないのです。
「現実に起こっていること」が見極められたら次のステップです。
「現実の問題を時系列に並べて、最初のひとつだけにフォーカスする」
ようにします。
ややわかりにくければ、次のように自問してみてもいいでしょう。
「いま、何をしていないことで、私の恐れや不安は増大しているのか?」
この答えが、あなたのフォーカスすべき「最初のひとつ」であるはずです。
その次のこと、さらにその次のことを考えたくなる気持ちはよくわかります。けれども、すでに判明したように、私たちは複数の問題を一度に解決できる能力などもち合わせていません。
そのような超人的な行動を期待することは潔くあきらめて、ただ一点だけに集中してください。
あなたの最高のパフォーマンスを発揮すると決意して、本気で、ゆっくりとていねいに「最初のひとつ」を始めてください。あなたがその仕事を初めて行ったときの気持ちを思い出しながら、ピュアに、慎重に、大切に、愛を込めながら、一歩ずつ進めて行きます。
30分でも1時間でもかまいません。いまのあなたが無理なく続けられるあいだ動いたら、手を止めてそれまでの成果を眺めてください。なかなかの出来映えの仕事がそこにあるはずです。
「うん、わるくない」と思ったら、一度、深呼吸をして頭の中を点検してみてください。不安のかけらは残っているかもしれませんが、けっして「不安でいっぱい」ではないことに気づくでしょう。
ここまで来られたら最後のステップです。あらゆる疑念や心配、よけいな自尊心をすべて捨て去って、次のことを検討してください。
「この窮地を助けてくれる人が、自分のまわりにいないだろうか?」
ここは直感の勝負です。最初に頭に浮かんだ人に、できるだけ早く助けを求めてください。どれだけ頼みにくいことであっても、最後の勇気を振り絞ってお願いするのです。
「妄想の連鎖」は私たちを孤立させ、他の人々とのつながりさえも忘れさせます。これさえ断ち切ってしまえば、「あらゆる問題はあなたひとりで解決する必要はない」と記された、「この世界のうまくいく仕組み」の中に戻って行けるはずです。
Photo by Satoshi Otsuka.
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