「仕事で疲れて何もできない」ときの解決法

最近、「やりたいことがあるのだけど、仕事で疲れてしまって家に帰ると何もできない」という悩みについてよく相談を受けます。

「やりたいこと」の中身は人によってさまざまで、新しい仕事を始める準備であったり、いまの仕事に活かせるスキルを身につけることであったり、家の掃除や食事の支度などの家事全般であったりします。

今日はこの、やりたいけれども「疲れてしまって動けない」「どうしても気力が湧かない」といった問題をどう解決すればいいかについて書いてみようと思います。

まず、バックナンバー「身体は意識の創造を外の世界に表現する道具」で書いたように、私たちは「身体」と「意識」のふたつの要素から成り立っているという仕組みを理解することが重要です。

加えて、次の2点についても共有しておきましょう。

① 私たちの創造を司るのは「意識」であり、「身体」はそれを表現する道具。
② 「身体」は疲れるが、「意識」は疲れたり消耗したりすることはない。

②の理由はいたって単純です。「身体」は物質であるがゆえに疲れますが、「意識」はモノではないので、疲れないのはもちろんのこと、消耗したり傷ついたりすることもありません。

さて次のポイントです。「やりたいのに、なぜか疲れてしまって動けない」を解決するためには、このブログでもっとも頻繁に登場するキーワード「恐れと不安」が、この問題とどう関わっているかをしっかりと認識する必要があります。

さらに2つのことを共有しましょう。

③ 「恐れや不安」を抱くと、動くこと以上に身体を疲れさせる。
④ 「恐れや不安」は「身体」にストッパーをかけると同時に、創造を司る「意識」を私たちの奥底に隠してしまう。

動けば疲れることを私たちはしっかりと自覚しています。「たくさん動いて疲れた」と感じたら、動くのをやめて休息を取るのがあたりまえです。ところが、「恐れや不安」を抱くことで、動くこと以上に身体が疲れることを、私たちはまったくといっていいほど自覚していません。

あらゆる望ましくない思いは「恐れや不安」から生まれます。つまり、「恐れや不安」と「悩む」「心配する」「怒る」などの思いは、私たちの中では同義語だということです。わかりやすいように、③を次のように変換してみます。

「悩んだり心配したり怒ったりすると、動くこと以上に身体が疲れる」

これなら「ああ、たしかに」と実感できるはずです。

けれども先に書いたように、ふだんの私たちはこのことをまず自覚していません。そのため、どれだけ疲れたとしても、望ましくない思いを抱くことを一向にやめようとしないのです。ぜひ、このことがいかに自分にムチ打つ行為かを想像してみてください。

さらに「恐れや不安」には④の作用があります。「足がすくむ」という言葉に象徴されるように、私たちは何かをするときに「恐い!」「不安だ!」と感じると、自然と身体が動かなくなります。

日常で抱くような「恐れや不安」は命の危険を感じるほどではないので、このことをはっきりと自覚するまでにはいたりません。けれども、断崖絶壁を目の前にしたときと同じように、何らかの「恐れや不安」を抱いたときから、私たちの身体は自分自身にストッパーをかけようとします。

これが第一段階と思ってください。第二段階は、このストッパーを外しかねない存在である「意識」の働きを停止させることです。なぜならば、②に書いたように「意識」はけっして傷つかない存在であるため、「恐い!」「不安だ!」などと感じずに平気で前に進もうとするからです。

ここで「身体」と「意識」による対立が起こります。けれども戦う前から勝敗は明らかです。そもそも「恐れや不安」は考えること、すなわち「思考」によって生まれます。そして「思考」とは、道具である「身体」の機能にほかなりません。

①で書いたように、創造を司るのは「意識」です。最初に「意識」が「こういうものを創りたい!」とイメージします。それを具現化してくれるコンピュータのような働きをするのが「思考」だと思ってください。コンピュータ単独では何も創造できないことを考えれば、「意識」と「思考」の役割の違いがわかるはずです。

道具として使えば最高にいい働きをしてくれる「思考」ですが、なぜか「恐れや不安」について考え始めると謀反を企てるようになります。こうして、道具である「身体」が「意識」を追いやって、自ら主人の座に就いてしまうのです。

このような状態になった私たちが、どれだけの時間、机の前にいても何も浮かばない、何も進まないのは当然のことです。

整理しましょう。まず、私たちは悩んだり心配したり怒ったりすることで、「身体」から膨大なエネルギーを消耗します。次に、そのような望ましくない思いの元である「恐れや不安」は「身体」にストッパーをかけようとします。そして最後にその「身体」は、創造を司る「意識」を私たちの奥底に追いやって「動けない自分」を完成させます。

これが、「やりたいことがあるのだけど、仕事で疲れてしまって家に帰ると何もできない」の正体です。すべての根源は「恐れや不安」にあります。

動いたことによる疲れなら、休息することでかならず回復します。30分ほど仮眠をとるだけでも、また1時間くらいは動けるようになるはずです。もし、何日も「何もできない」状況が続くとするならば、原因は別のところにあると考えるべきです。

つまり、動く時間を減らしたり、効率化を図ったりするだけでは、この問題は永遠に解決しないということです。

その前に何をするかは明らかです。ぜひ、次のことをチェックしてみてください。

・職場や家庭で悩んだり心配したり怒ったりすることが多くないか?
・やりたいことが何もできないという状況に「恐れや不安」を感じていないか?
・やりたいことを始める前に、先行きについてあれこれと「思考」していないか?

拙著『グッドバイブス ご機嫌な仕事』やこのブログに書いてきた「意味づけを手放す」「過去や未来について思い悩むことを手放す」は、すべてこのような状況を改善するためのメソッドです。

「身体」が隠してしまった「意識」を蘇らせて、動ける自分を取り戻すことといってもいいでしょう。ぜひ、そんなイメージをもって実践してみてください。

そして何よりも、先に挙げた①から④の仕組みと、それが自分にどのような影響を与えるかをしっかりと認識することが重要だと私は考えます。