拙著『グッドバイブス ご機嫌な仕事』に「意味づけを手放す」という話を書きました。もちろん、このブログでもいろいろな角度からこのテーマについて解説しています。
すべての出来事や他人の言動には、最初から決まった意味などありません。けれども、私たちは頭の中でネガティブな妄想をしながら、それらに勝手な意味をつけてしまいます。
つまり、私たちに怒りや不機嫌さを抱かせる原因は「外側」にあるのではなく、自分自身による「意味づけ」、すなわち「内側」にあるということです。
このような話を聞くと、悩みの責任をすべて自分が背負うようで気が重くなるかもしれません。けれども、見方を変えてみると、これはとてもラッキーなことだとわかります。
なぜならば、出来事や他人の言動などの「外側」にあるものは変えられませんが、私たちの「内側」にある「意味づけ」なら、それを手放すことが可能だからです。これによって、私たちは、無条件に怒りや不機嫌さを抱く代わりに、自分の意志でグッドバイブスでいるという選択ができるようになるのです。
ただ、何十年ものあいだ「意味づけ」を繰り返してきた私たちにとって、それをやめることはやはり簡単ではありません。実際に、多くの人から「とくに、人間関係における意味づけを手放すのが難しい」という相談が寄せられています。
そこで今日は、人を相手にした際に「意味づけ」を手放せないときの注意点について書いてみたいと思います。
まず、次のことを100パーセント受け入れているかを確認してください。
① 私は、この人が何を目的としてそのようなことを言い、そのような行動をするのか、本当のところは何もわかっていない。
「意味づけ」を手放す唯一にして最大の理由は、「私たちは本当のことを何も知らない」からです。知らなければ意味をつけることはできません。知らないのに無理に意味づけしようとすれば間違うことは明らかです。だから手放すのです。
ここを取り違えて、少しでも「この人の心の内はわかっている」と思ってしまえば、自分がつけた意味はその時点で確定してしまいます。こうなると、「意味づけ」を手放すことは極めて困難になります。
バックナンバー「一日をいい感じで始めるための自分の整え方」で、「自分は何もわかっていない」ことを忘れないようにするためのトレーニング方法を紹介しています。この部分が徹底していないと感じたら、ぜひトライしてみてください。
次の注意点はこれです。
② 「意味づけ」ではなく、抱いてしまった感情のほうを手放そうとしていないか。
怒りや不機嫌さなどの望ましくない感情は「結果」です。そして、そのような思いを抱かせた「意味づけ」が「原因」です。結果である感情を手放そうとしてもうまくいきません。そうではなく、あくまで原因である「意味づけ」を手放すようにしてください。
そのためには、「いま、このような嫌な思いを抱いている自分は、どんな意味をつけてしまったのか?」をしっかりと見極めなくてはなりません。自分のつけた意味がいまひとつ漠然としているようなら、こう自問してください。
「いま、自分はこの人をどう見ているのか、どういう人だと判断しているのか?」
おそらく、嫌なヤツ、気むずかしいヤツ、心の狭いヤツ、尻の穴の小さいヤツ、無神経なヤツ、冷たいヤツ、クソ野郎などのネガティブな印象をもっているはずです。その判断自体を手放してください。なぜそうするかの理由は①に書いたとおりです。
もうひとつ、「意味づけ」を手放すことに大きな抵抗を感じたときは、次のことを確認してみてください。
③ あなたは目の前の人を敵と見たいのか? それとも仲間と見たいのか?
いま目の前で繰り広げられている言葉のやりとりや、相手の行動への「意味づけ」を考える前に、そもそも、あなたはその人を敵とみなしていないかを確認するということです。
「意味づけを手放す」とは、自分は何も知らないという事実を受け入れ、相手をありのままに見ようとする努力にほかなりません。もし、すでにあなたの中で「この人は自分の敵だ」と意志決定されているとしたら、その時点でありのままに見る目は曇ってしまっています。
この状態で「意味づけ」を手放そうとしてもまずうまくいきません。すべては自分の心に平安をもたらすためと思って、仲間まではいかなくても、好きでも嫌いでもないフラットな人をスタート地点にしてください。
最後に、次のことを確認しておきます。
④ 怒っている人や不機嫌な人、威圧的な態度をとる人はけっして恐くない。
バックナンバー「まわりにいるバッドバイブスな人への対処法」で書いたように、あなたに対して望ましくない言動をする人は、間違いなく何らかの「恐れや不安」を抱いています。
言い換えるなら、あなたとのやり取りにおいて、彼や彼女は「何かが恐い」「何かが不安」と感じているだけなのです。どれだけ語気を荒げていようと、辛辣な言葉をぶつけてこようと、恐がっている人間を恐いと感じる必要などありません。
もし、相手に恐怖を感じてしまったら、あなたは自分を守ることを最優先にしたいと思うでしょう。そこで防衛手段として繰り出すのが「意味づけ」であることをしっかりと認識してください。
「意味づけとは、自分の身を守るために、まず最悪の事態を想定して、自分はこれから何が起こるか知っているという状態を作ろうとする行為」
相手を恐いと感じた瞬間に、抗うことが極めて難しい「意味づけ」が始まります。
「ああ、これはもう収集がつかない。早々に納得したふりをしてこの場を立ち去ろう」「この人とは深く関わらないほうが身のためだ」など、自分の身を守るための「意味づけ」をしながら、相手とのやり取りの中でさらに「意味づけ」を手放すなどという複雑な芸当ができるはずはありません。
先のバックナンバー「まわりにいるバッドバイブスな人への対処法」に書いたように、けっして恐がらずに、「この人はいま何が恐いのだろう?」と「恐れや不安」の源泉を探すことだけに集中してください。
以上が、人を相手にした際に「意味づけ」を手放せないときの注意点です。
もうひとつ付け加えるとしたら、けっして無理をしないことです。「ああ、この状況ではもう嫌な思いを抱いたままでも仕方ない」と思ったら、「意味づけ」やグッドバイブスのことなど忘れて、そのまま修羅場を体験するのもわるくありません。
人生には無駄なことなどひとつもありません。そこから得られるものも少なくないはずです。焦らず、完璧を求めず、少しずつゆっくりとゲーム感覚で実践するのがうまくいく秘訣です。
Leave a Reply