拙著『グッドバイブス ご機嫌な仕事』の中で「しあわせな役割」について書きました。この世界に暮らす私たちには74億の違いがあり、そこから74億の個性が生まれます。そして、それぞれの個性が誰かの役に立つとき、私たちは「しあわせな役割」を得ることになるのです。
最大の問題はどのようにして「しあわせな役割」を見つけるかです。先の文章の流れからすると、「まずは自分の個性を知り、それを活かせる仕事に就く」という方法が妥当のように思えます。
もちろん、そのように物事が進むに越したことはありません。けれども、実際に何らかの仕事を手がける前に「自分の個性は何か?」を知ることは簡単ではありません。もし、運よく答えを得られたとしても、「では、その個性を活かせる仕事は何か?」というさらなる難題が待ち受けています。
そこで拙著では、自分の個性を探る代わりに、次のようなやり方を提案しました。
「いまいる場所で本気を出せば、自然としあわせな役割に導かれる」
今日は、これがどういうことなのかについて書いてみたいと思います。
私たちは「人との関わり」の中で生きています。そもそも「役割」とは誰かの役に立つことです。もし、あなたがこの世界でたったひとりで暮らしているならば、「役割」という概念をもつことすら不可能だったはずです。
私はこの「人との関わり」において、自分と他の人々との間には「引力」のような作用が生じていると感じています。引力とは「2つの物体の間に働く、互いに引き合う力」です。
注目すべきは「互いに」という部分です。どんなときでも、私たちには次の2つの力が同時に働いているとイメージしてみてください。
A: 自分が他人を引きつける力
B: 他人が自分を引きつける力
では、ここでいう「引きつける力」とは何でしょうか。「引力」は英語で「Attraction」と表されます。とても興味深いことに、「Attraction」には「魅力」という意味もあるのです。
そう、私たちの間に生じる「引力」とは「魅力」のようなもの、すなわち「人を惹きつける力」です。
そして、Aの「自分が他の人を引きつける(惹きつける)力」は、
「好きなこと、興味があること、得意なことをやり尽くす」
ことによって生まれます。
もう一方の力、Bの「他の人が自分を引きつける(惹きつける)力」は、
「これをやってほしい、これを頼みたい」
というリクエストや依頼の形であなたにもたらされます。
この2つの力が最適なバランスで発揮され、お互いが相手の周囲を公転しているような状態にあるとき、自分のいるまさにその位置を「しあわせな役割」と感じるのだと私は考えます。
では、「いまいる場所で本気を出す」が、この仕組みにどんな影響を与えるかを考えてみましょう。
まず、Aの「好きなこと」「得意なこと」が自分の中で明確になっていきます。どんなことでも、本気でやらなければその中に存在するおもしろさは永遠にわからないからです。
次に、本気を出すことによって、あなたの「他の人を惹きつける力」はどんどん大きくなっていきます。その「魅力」は当然、周囲の人々に伝わり、Bの「他の人があなたを惹きつける力」も強めることになります。
さて、ここでもっとも重要なのは、Aの力、
「自分の魅力について、その全体像を自分だけで理解することはできない」
という事実に気づくことです。冒頭に書いた「自分の個性がよくわからない」とまったく同じことです。
そして、それを教えてくれるのが、あなたに「これをやってほしい、これを頼みたい」という形でやってくるBの「他の人があなたを惹きつける力」なのです。
ここまでの話を整理してみましょう。あなたは次のようなプロセスをたどりながら「しあわせな役割」に導かれていきます。
① 好きか嫌いかは置いておいて、目の前のことを本気でやる。
(本気でやる前のあなたは、本当は何が好きか、得意かをまだ知らないから)
② 本気でやる中で次第に「好き」や「得意」を知り、大まかな「自分の進むべき道」が見えてくる。
③ あなたの「魅力」に惹きつけられた人が、あなたを引き寄せようとする。
④ 他の人からの依頼を受けながら、自分の「魅力」の全体像に気づく。
もちろん、「これがやりたい!」という思いに従って動くことは大切です。けれどもそれは、「しあわせな役割」に向かう往路のようなものです。その完成には、あなたよりもあなたをよく知る他の人からの引力が働く、復路を走りきることが不可欠です。
この意味で、「しあわせな役割」には自力だけで「たどり着く」のではなく、他の人の力に助けられて「導かれる」ものだと私は捉えています。
「好きか嫌いかに関わらず本気を出せ」という一見、理不尽に思えるステップ①は、そのための練習のような効果もあると捉えてください。
実際に、ステップ④の中には「マジか!」と言いたくなるような依頼もあります。けれども、あえてそれを受けてみることで、それまで想像もしなかった自分の可能性に出会えることはけっしてめずらしくありません。実際に私の現在の仕事は、すべてそのような流れを経て得たものです。
繰り返しますが、「引力」とは「互いに引き合う力」です。あなたが心の底からやりたくないと思うことや、本気で苦手なことが、「互いに引き合う力」の自然な結果としてやってくることはありません。
私たちの予測や読みは本当にあてになりません。実際にやってみれば、それが自分に必要かそうでないかは、それほど長い時間をかけずともわかるはずです。
ぜひ、「Attractionの法則」を信じて、「ほう、そう来たか。じゃあきっと、自分ではまだ気づいていない私の魅力がそれを引き寄せたんだろう」と、ひとまずは受け入れてみてください。
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