本気を発揮して「与えるすごさ」を実感する

バックナンバー「本気が自分は弱い存在という妄想を消す」で、本気を発揮することで得られる3つの恩恵について書きました。

① 時間の概念がなくなる。
② 疲労感や消耗感を抱かなくなる。
③ なぜか身体に不調が起きなくなる。

これによって、最高品質かつ最速なアウトプットが出せるだけでなく、「やりたいことがあるのに、家に帰ると疲れてしまって何もできなくなる」といったことも、ほとんどなくなります。

何を隠そう、生粋のなまけ者だった私が、1年と1か月にわたって、1日も休まずに3000字強のこのブログを更新できているのも、3つの恩恵のおかげです。

これだけでも「本気モード」にトライする価値は十分にあると思いますが、今日は同じ記事で予告しておいた、ある意味、この試みの最大の報酬ともいえる、

④ 与えるすごさを実感できる。

がどのようなものかについて書いてみようと思います。

まずは、この取り組みで忘れてはならない2つのルールを確認しておきましょう。

A:「いま目の前にあることを本気で行う」
B:「他の人から依頼されたことは、原則として即座に本気で行う」

そもそも、私たちが行えるのは「目の前にあること」だけです。つまり、Aは文字どおり「すべてのことを本気でやる」という意味です。加えて、それが「他の人からの依頼」だった場合に、Bのルールが適用されます。

このトライをどう捉えるかにもよりますが、もしあなたが、「いつでも本気を発揮できるようにするためのトレーニング」と思えるなら、誰からのどのような依頼であっても、しばらくは選んだりスルーしたりせずに、すべて引き受けることをおすすめします。

「即座に」の部分も同様です。仕事などで、「どうしてもいまは手が離せない」という場合をのぞいて、可能なかぎり最優先で実行してみてください。

さて、ここからは先の2つのルールに則って行動すると、何が起こるかを見ていきましょう。わかりやすいように、次のようなシチュエーションを想定して、通常の対応と本気モードとで、結果がどのように変わるかを検証してみます。

私は男性なので、相手を「奥さん」として書きますが、あなたの状況に合わせて、話のディテールを「パートナーからの依頼」に変えて読んでください。

ある日の日曜日、あなたは超多忙だった先週の疲れを癒すために、今日は一日中、のんびり過ごしたい思っていました。

いつもより遅い昼食のあと、「さぁ、これから休むぞー」とソファーに寝そべったそのとき、奥さんがやってきてこう言います。

「もう12月も残り少ないから、少しずつ大掃除を始めようよ。今日はできれば、窓を全部、拭いてしまいたいの。私は手が届かないから、お願いしていいかな?」

その瞬間、あなたは「マジかよ! せっかくの休日が台無しじゃないか!」と感じることでしょう。だからといって、シカトを決め込むわけにもいきません。選択肢はいつものように反応するか、本気でやるかの2つです。

まずは通常の対応からいきましょう。

通常の対応 ①:昨日までどれだけ自分が忙しかったかを伝えながら、残り少ないといってもまだ12月中旬だから、あえて今日やる必要はないと奥さんを説得する。
通常の対応 ②:やりたくないと言ってキレられるのも面倒なので、適当に窓を拭いたフリをして、とっとと終わらせてしまう。

次に、あなたがこの対応をしたことによって起こるであろう「結果」です。

結果 ①:「そうやって来週、また来週とズルズル延ばしていたら、結局は私ひとりでやることになるじゃない!」と怒られる。
結果 ②:適当に窓を拭き終えてソファーに戻ったあなたに、「あれで掃除したと思っているの? どうせあなたは、家がキレイかどうかに興味なんてないんだよね!」と怒られる。

ここで、奥さんのキツい言葉や態度に反応してもあまり意味はありません。なぜならば、それは、昨日の記事「深い霧を払いのけて本来のその人を見る」で書いたように、「恐れや不安」から発せられた「表現」だからです。

グッドバイブスでは、ここで「自分の対応によって、奥さんがどのような恐れや不安を抱いたのか?」を探りに行きます。その具体的な中身は、過去のいきさつによって大きく変わってきますが、私は次の2つに集約されると予想します。

「この人は、私との生活を大切だと思っていない」
「この人は、私という存在を大切だと思っていない」

そして、この「恐れや不安」からは次のようなイリュージョンが生まれます。

「こんな人と一緒にいたら、私は一生、しあわせになれないんじゃないか?」

この手の修羅場を収めるのがきわめて難しい理由がここにあります。

あなたの見ている世界は、「今日は掃除をすると勝手に決めた妻が、疲れている自分を困らせている」であるはずです。そして、奥さんの憤りの原因は「その計画が実現しないこと」だと予想しています。

これこそが、相手の怒りという「表現」だけを見てしまうことで起こる大きな誤解です。

あなたに怒りをぶつける奥さんにとって、すでに「窓拭き」は大きな問題ではありません。そうではなく、

「自分は、唯一の結婚相手からも、こんな扱い受けるほど無価値な存在なのか?」
「もしかしたら、私には、しあわせになる価値などないのだろうか?」

という、自分の「存在価値」が揺らいでいることが恐くて不安なのです。

「いやいや、そこまで大げさな話じゃないでしょ」と思うかもしれません。もしかしたら、奥さんもそのことを自覚していない可能性もあります。

けれども、私たちが誰かにあっさりと依頼を断られるとき、あるいは、とてもいい加減にそれを実行されたときに感じる、虚しさや寂しさ、孤独感や無力感を思い出してください。

自分が軽くあしらわれたような、ちっぽけな存在になってしまったような、そんな感じがしないでしょうか。つまりは、自分の「存在価値」に確信をもてなくなったのだと私は考えます。

では、同じ状況に「本気モード」で挑んだらどうなるかを見てみましょう。

本気モードの対応:奥さんの依頼を聞いた瞬間にすくっと立ち上がり、「よっしゃ、じゃあ今日から始めるか!」と、即座に本気モードを発揮し、プロ顔負けのピカピカに窓を磨き上げる。
結果:その窓を見た奥さんは、「うわー! こんなにキレイになるんだね!」と満面の笑みを浮かべ、あなたの仕事ぶりを称える。

ぜひ、この話をモラルや道徳や、人の道などの視点で捉えないでください。奥さんのご機嫌を取るためや、ほめられるための努力とも違います。そういううわべのことはどうでもいいのです。

通常モードと本気モードの2つの結果で注目すべき点は、「奥さんの中に恐れや不安が生まれたか?」だけです。

つまり、この本気の取り組みであなたが彼女にもたらしたものは、単なる「ピカピカの窓」ではなく、

「自分は、頼めばここまでやってもらえる、価値ある存在なんだ!」

という確信なのです。

この意味で私は、「他の人からの依頼を即座に本気で行う」とはすなわち、

「与えること」

と捉えています。

先にサラッと書きましたが、休日をのんびり過ごすことを心待ちにしていたあなたが、それを吹っ飛ばすかのような奥さんからの依頼を聞いたとき、いっさいの躊躇なくソファーから立ち上がるには、相当の覚悟と努力が必要です。

そこでこう自問してほしいのです。

「私は、自分の価値を信じられなくなった彼女と、それを確信した彼女と、どちらを目撃したいだろうか?」

この問いをもっと身近に感じるために、こう言い換えてもいいでしょう。

「どちらの彼女と一緒に暮らすのが、自分にとってしあわせなのだろうか?」

もし、「恐れや不安」をもたずに、自分の価値を確信する奥さんをいつも見ていたいと思うなら、あらゆる依頼を即座に、そして本気で実行してみてください。

あなたはそのたびに、生まれながらにもつ、本来の自分の価値を思い出した、キラキラと輝く彼女に出会えます。

と同時に、

「それを私は、自分のこの手で与えられたんだ!」

という、この人生で味わえるもっとも大きな充実感と、絶対に揺らぐことのない自信も得られているはずです。

まだまだこれで終わりではありません。この至福の状態に、前話で書いたグッドバイブスのゴール、

「だとすれば、私の中にも、彼女とまったく同じ価値があると信じていいんだ!」

という、あなた自身の「絶対不変の価値」も、確信へと変わるのです。

最後に残るハードルは、あなたの中にある次のような「恐れや不安」です。

「そんなことをしたら相手がつけあがって、次々と依頼されるんじゃないか?」
「自分が相手よりも下になったような気がするんじゃないか?」
「自分だけがいつでも本気モードを発揮するのは、不公平じゃないか?」
「それでは疲労困憊して、身体がもたないんじゃないか?」

もし、実際にやってみて、それも一度や二度ではなく、繰り返し実践してみて、このようなことが起こったとしたらそれは現実の問題です。

けれども、この話を読んでそのような懸念が頭に浮かんだとしたら、いうまでもなくそれは「イリュージョン」です。

私はこのメソッドを実践してからもう5年ほどになりますが、本当に起こることはまさにイリュージョンの真逆ばかりです。

急な依頼は次第に減っていきます。とくに先の例のように、ゆっくり休んでいるようなときの頼み事はほとんどなくなります。けっして下に見られることもありません。そして、不公平感など吹き飛ぶほど、得られるものは膨大です。

では、なぜそのようなことが起こるのでしょうか。理由はいたってシンプルです。

「恐れや不安がなくなった相手は、自分が大切にされているかどうか、自分が価値ある存在なのかどうかを、私の反応を見て確かめる必要がまったくなくなる」

からです。

以上が、「与えるすごさを実感できる」ことの全貌です。

まとめるなら、

「グッドバイブスにおいて与えるとは、相手の恐れや不安を取り除き、その人が生まれながらに手にした、絶対不変の価値を思い出させること」

となります。

たしかにこの取り組みはかなり大変です。時間もエネルギーも使います。けれども、「本気が自分は弱い存在という妄想を消す」で書いたように、本気モードには、「疲労感や消耗感を抱かなくなる」というマジックも組み込まれています。

そして何よりも、それを与えた瞬間に、

「ずっと見たいと望んでいた、穏やかで平安な本来の相手」

から、あなたも「絶対不変の価値」を与えられるという、かけがいのない報償が待っていることを忘れないでください。

今回は家庭を例に話を進めましたが、もちろん、職場でも友人関係でも、恋愛関係でも、あらゆるシチュエーションで「与えるすごさ」は実感できます。

グッドバイブスのゴールを目指して、ぜひ「他の人から依頼されたことは、原則として即座に本気で行う」を、身近なところから実践してみてください。