自分の信念と真逆の言動をする人を赦す方法

前話「ひとつ意識こそ究極の自分を大切にする選択」で、

「どこまで自分の範囲を広げられるか?」

にチャレンジする連想ゲームを行いました。

身近にいる最愛の人をクリアしたあと、あなたはどこまでいけたでしょうか。やはり、家族や親類、親友、職場の人間、SNSの知り合いとたどっていくうちに、「コイツだけは絶対にムリ!」といいたくなるような人物にぶつかったでしょうか。

同じく前話で、私は次のような問いを掲げました。

「もしこのまま、世界中の76億人すべてに対して自分の範囲を広げられたとしたら、自分を大切にするという概念はどう変わるだろうか?」

そして実は、悟りをひらいたり、何かを超越したりすることなく、誰もが76億人すべてに対して自分の範囲を広げられると私は確信しています(笑)。でなければ、「ひとつ意識」など存在しえないからです。

そこで今日は、前話の連想ゲームであなたの前に立ちはだかった人たちを、どうすれば赦せるようになるかについて書いてみようと思います。

◎「気に入らないリスト」が教えてくれること

最初に、ごくごくあたりまえのことを確認しておきましょう。「コイツだけは絶対にムリ!」と感じた人は、あなたにとって、

「嫌いな人か苦手な人」

であるはずです。

場合によっては、嫌いや苦手といった形容詞では表せないほど複雑な感情を抱いていることもあるでしょう。でも、少なくとも彼や彼女が「好きではない」ことは確かだと思います。

そこで、あらためて次のことを考えてみてほしいのです。

「あなたは、その人の何が気に入らないのか?」

もしかしたら、相手のことを想像するだけで気分がわるくなるかもしれません。そこはグッとこらえて、淡々と気に入らない点を列挙してみてください。

たとえば、かつて私の壁になっていた人ならこんな感じです。

・ とにかく時間にルーズ。
・ 口先ばかりでいつも実行が伴わない。
・ うまいことを言って、上司や取引先に気に入られるのが得意。
・ お金が大好きで、損得勘定ばかりを気にする。
・ 自分の自慢話をするのがとにかく好き。
・ 勝ち負けにこだわり、「お前だけには負けない!」などと挑発的してくる。

あらためて書き出してみても、こんなヤツは嫌われて当然という思いが強まるばかりです。この人に自分という範囲を広げることなど、どう考えても不可能な気がします。

でも安心してください。この「気に入らないリスト」の中に、「この人を赦してもいいかもしれない」とあなたの心を変えるための、大きな手がかりがあるのです。

試しに、すべての項目について次のことを自問してみてください。

「あなたは、いま挙げたことはけっしてやらない人か?」

その人の気に入らない点として「時間にルーズ」を挙げたとしたら、「自分は時間に遅れることはないか?」を振り返ってみるということです。

おそらく、すべての項目について、答えは「YES!」もしくは、「完璧ではないけれども、少なくともこの人よりはまし!」であるはずです。

ここで、ひとつの重大な事実が浮かび上がってきます。無意識だったかもしれませんが、あなたは次のようなルールやモットー、哲学、美意識をもって、これまで生きてきたに違いありません。

・ とにかく時間は厳守すべき!
・ 有言実行! 言ったからには行動すべし!
・ 上司や取引先には誠意をもって向き合うべし!
・ お金や損得勘定で何かを決める人間になるな!
・ 黙って結果を見せるべし! 自分の自慢話などもってのほか!
・ 勝ち負けがすべてではない! ライバル意識をもつなど子供じみている!

どれも、先の「気に入らないリスト」を裏返しただけです。

あなたにとってこれらの事柄は、人として道を踏み外さないための掟であり、しあわせに生きるための指針であり、成功法則のようなものでもあるはずです。

ひとことで、

「信念」

といってもいいでしょう。

さらにいえば、あなたはこれまでの人生で、この信念を守るために不断の努力をしてきました。やると言ったのに実行しない自分、損得で選びたくなる自分、自慢話をしたくなる自分にでくわすたびに、それじゃダメだと厳格に戒めてきたのです。

あなたの「気に入らない人」は、そんな苦労を踏みにじるように、まるであざ笑うかのように、ことごとく真逆の言動を選択します。ひとまずは、その姿を目撃するだけでも「ありえない!」と憤りを感じるのは当然のことです。

でもそれだけでは終わりません。その「気に入らない人」は、あなたの鉄の掟を簡単に破りながらも、けっこううまく立ち回れているのではないでしょうか。

「上司や取引先に気に入られるのが得意」で、「お前だけには負けない!」などと挑発できるとしたら、おそらく、まわりから総スカンを喰らうほど悲惨な状況には陥っていません。場合によっては、あなたよりも多くの評価を得ている可能性もあります。

そんな様子を見たあなたの頭の中に、一瞬でも次のような「恐れや不安」がよぎらなかったでしょうか。

「もしかして、コイツのやり方のほうがうまくいくのか? 自分は間違っていたのか?」

もちろん、そう簡単にこのことを受け入れるわけにはいきません。ここまで自分が大切にしてきた信念と、それを破らないために費やした努力が、すべて意味のないものになってしまうからです。

だとすれば、もう自分を守る手段はひとつしかありません。もう一度、先に挙げた「気に入らないリスト」の項目を根拠にしながら、

「コイツだけは絶対に認めない!」

と相手を全否定しておくしかないのです。

◎「異形の人」ではなく、足りないものを補ってくれる人

ここまでの話を踏まえたうえで、イメージしてみてください。もしこの世に、

「あなたの信念の真逆を映し出す鏡」

があったとしたらどうでしょう。

あなたがその鏡の前に立てば、まさに「気に入らない人」がそこに現れるはずです。なんとしても、この重大な事実を見逃さないでください。

つまり、

「あなたなしでは、気に入らない人はその姿をしていられない」

ということです。

そしてこれこそが、あなたの「嫌いな人」や「苦手な人」が、あなた以外の人には好かれることもあり、けっこううまくやれている理由でもあります。

すべての「気に入らない人」は、あなたと無関係に単独で存在しているわけではありません。運わるく、そういう人があなたの前に現れているのでもありません。

あなたの中にある「あなたの信念の真逆を映し出す鏡」が、この世界に「気に入らない人」をひとり、ふたりと創造し続けているのです。

この仕組みさえわかってしまえば、自分の範囲を広げられない壁をぶち壊す方法も見えてきます。

「ということは、自分の信念を捨てろってこと?」と思うかもしれません。たしかに、私たちにとっての信念とは、このブログで書いてきた、

「正しさ」

にほかなりません。

それが負の「意味づけ」や、望ましくない「未来の予測」、そして「罪悪感」を生む根源だと私は考えています。

それでも、あなたが「でもこの信念だけは大切にしたい!」と思うのであれば、次のように認識を改めればいいのではないでしょうか。

「この信念は、私という76億分の1の個性をもつ人間が、自分なりにうまくいくようにカスタマイズした、私だけに効果のあるやり方なんだ!」

あなたのすべての信念を、「朝食は米よりもパンのほうが調子が出る」「風呂は熱すぎない38度くらいがいい」とった、自分なりの健康法のようなものと捉えるということです。

その真逆を信じる白米派や熱湯風呂派がいたとしても、あなたはその人たちを嫌いにはならないはずです。時間厳守や有言実行も、本質的にはこれと何も変わりません。

あなたの信念はあなたが守れば、それだけで本来の役割を十分に果たしてくれます。たとえ、あたなとは異なる個性をもつ他の人々が、真逆の信念をもって生きていたとしても、あなたには何の実害もないのです。

ちなみに私は、物作りにおいて「期限を守るか? 内容を充実させるか?」の二択になったときは、迷わず後者を優先させます。それによって締切を守れなかったとしても、少しもわるびれることはありません。

雑誌の編集長をやっていた時代に、この真逆の信念をもつ女性スタッフがいました。もう少し手を入れればかなりよくなるとわかっていても、彼女にとって期日を超えることは絶対にやってはいけない大罪です。

そうして65点くらいの原稿を提出するたびに、私は「ここが甘いからやり直して」と容赦なく突き返します。最初のころの彼女は「それでは締切に間に合いません!」と強い憤りをぶつけてきたものです。

このままでは「信念の真逆を映し出す鏡」の効果によって、お互いに「気に入らない人」になりそうですが、予想に反して私と彼女の関係はきわめて良好でした。

そもそも私は、ズルズルと締切をうしろに倒すスタッフばかりの中で、期限を一日も超えることなく原稿を提出し続ける彼女を心からリスペクトしていました。それが、内容の充実度をおろそかにするという弊害を伴っていたとしてもです。

彼女も、なぜ私がそこまで中身にこだわるかを次第に理解してくれて、「今日が締切ですが、もう少しやってもいいですか?」と聞いてくるようになりました。最後にはなんと、期日どおりに100点満点に近い原稿を出すという、スーパー編集者に育ってくれたのです。

私と彼女は、個性と信念の違いによって何もかもが異なっています。もし、それぞれが自分の「正しさ」だけを絶対と信じて疑わなければ、どちらも、

「恐れや不安をもたらす異形の人」

に見えていたことでしょう。

けれども、「なんとしても期限を守る」という信念をもつ彼女は、私にはない能力によって、私に足りないものを補ってくれるかけがえのない存在だったのです。実際に、いつも時間に追われる編集の現場で、どれだけ彼女に助けられたかわかりません。

反対に私は、「でも内容を犠牲にしてはいけない」という、彼女が見失いがちなことを伝えるために、彼女の前に現れるべき存在だったのかもしれません。

つまり、あなたの「気に入らない人」は、その違いを赦せさえすれば、違うがゆえに、

「最強のタッグパートナー」

になってくれる可能性があるということです。

そしてこれができたなら、先に挙げたあなたの信念が、実はあなたを窮屈にしているという事実にも気づけるはずです。

すでに書いたように、信念はその裏にかならずタブー、すなわち、

「絶対にやってはいけないこと」

を隠しもっています。

あなたはこれまで、その「正しさ」や戒律によって自由を失い、選択肢の幅をきわめて少なくしてこなかったでしょうか。

だとしたら、あなたの信念の真逆を行く人は、

「そうかな? かならずしもそのやり方でなくてもうまくいくんじゃない?」

と、あなたひとりではけっして進めなかった新たな道があることを、体現し、証明してくれている貴重な存在でもあるのです。

自分の禁じ手を軽々とやってのける人たちを「恐れや不安をもたらす異形の人」と見るのはやめましょう。その代わりにこう自問してください。

「私が赦していないのは、そんな彼や彼女に嫉妬している自分自身ではないか?」

もちろん、これだけですべての人を赦せるわけではありません。さらなる強敵もまだまだ数多くいるでしょう。でも、少なくとも最初に前話の連想ゲームにトライしたときよりも、何人かは赦せる人が増えているはずです。

Photo by Satoshi Otsuka.


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