私たちに日常的な「恐れや不安」を抱かせる要因のひとつに、
「人に嫌われたくない!」
という思いがあります。
たしかに、自分が密かに思いを寄せる大好きな人に嫌われたとしたら、生きる気力も失うほど落ち込むでしょう。でも、私たちが日々、「嫌われたらどうしよう」と気を揉んでいるのは、そういう特別な相手からだけではありません。
職場にいるすべての人、知人や友人、ソーシャルメディアのフォロワーから、場合によっては、偶然、電車に乗り合わせた見知らぬ人や、飲食店に居合わせた自分以外のお客さんまでもが「嫌われたくない」対象に含まれることもあるのです。
もちろん、いつもそのような不安を抱え、ビクビクしながら暮らすのはけっして心地いいものではありません。当然、「平安な心」やグッドバイブスの妨げにもなるでしょう。
そこで今日は、まるで亡霊のように私たちにつきまとう、「人に嫌われたくない!」という思いにどう向き合っていけばいいかを考えてみたいと思います。
まずは、この話にかならず登場する、ある可能性をバッサリと消去しておきましょう。意外と多くの人がここに入り込んで、悩みを大きくしているように見えるからです。
その可能性とは、
「これさえやっておけば絶対に誰にも嫌われないという、完璧な対策はあるか?」
の答えです。
期待としては、私もそれがあればどれだけ楽かと思います。でも残念ながら、そのような対策はこの世に存在しません。
理由は、次のようなあたりまえ過ぎる仕組みを思い出せばすぐにわかります。
「どんなときでも、自分を嫌いになるのは、自分以外の人である」
もし仮に、頭に装着すると、その人が「嫌い」と思う要素をすべて洗い出し、「彼や彼女にはこれをしてはいけない」などのわかりやすい言葉で、タブーリストを作ってくれるマシンが発明されたとします。
これだけでもすでにありえない話ですが最後まで続けます(笑)。
そのうえで、国連の法律か何かで、この世界に住む76億人に、「6時間おきにこのマシンをつけてデータをアップデートすること」が義務づけられたとしましょう。
「6時間おき」とされているは、私たちの気持ちがつねに移り変わるからです。誰かともめたり、手痛い失敗をしたり、心を揺さぶられる映画を観たりすることで、「嫌い」の中身が変化することに対処するため、そのように定められました。
タブーリストのデータベースは、誰でも見たいときに無料で参照できます。あなたは真っ先に、いまもっとも「嫌われたくない」と思う、自分の職場にいる人たちの情報を引き出すでしょう。
ところが、衝撃の結果を見てあなたは固まってしまいます。何よりも「彼や彼女にはこれをしてはいけない」項目は想像を超えるほど膨大です。
それだけならまだしも、詳細にリストの内容を読んでいくと、
「Aさんには、朝イチバンで大きな声で元気に挨拶しなければならない」
「Bさんは目覚めがわるいので、早朝に声をかけてはならない」
などの、人によって真逆の行動を求められるものもあれば、
「Cさんは仕事のできない人が大嫌い」
「Dさんは、自分の地位が脅かされるから、仕事のできる人が大嫌い」
といった、両方に嫌われないことが事実上、不可能なものもあります……。
ありえない話はこのあたりで十分だと思います。ありえないマシンが発明され、ありえない法律とデータベースが作られたとしても、結局のところ「タブーリスト」は「人に嫌われたくない!」という不安を解決してはくれないのです。
風呂に入っておく、最低限の公共マナーは守るなど、すべてを否定するつもりはありませんが、究極的にはやはり、
「人に嫌われない努力ほど報われないものはない」
という結論にたどり着くしかないと思うのですが、いかがでしょう。
これが、この問題から解放されるための第一歩です。まずはあなたの中から、
「嫌われないように自分を変える」
という発想自体を手放してください。
そのうえで、「人を嫌う」ことの本質が何かを見極めます。あなたの中にいる「大嫌いな人」を思い浮かべれば、それがどのような経緯で生まれたかに気づけるはずです。
拙著『グッドバイブス ご機嫌な仕事』の冒頭で書いたとおり、
「あなたの嫌いな人は、あなたが自分の意志で創造した」
のです。
ここに2人の人物がいます。Aさんはあなたの仕事には絶対に欠かせない重要人物です。もうひとりのBさんは一週間前に知り合って意気投合した友人です。この2人がまったく同じ、「あなたにとってかなり望ましくない行動」をしたとします。
どちらに対しても苛立ちや怒りは覚えるでしょう。けれども、あなたは瞬時に「Aさんとの関係がこじれたらマズイ」と判断して、「それはやめてほしい」と抗議しながらも、「でも、この人は嫌いにならないでおこう」と意志決定します。
では、もう一方のBさんの場合はどうでしょう。まだそれほど仲のいい間柄ではありません。損得がからむような要素も見あたりません。だとしたら、いっさいの歯止めなしに「コイツは嫌いだ!」と決めてしまわないでしょうか。
「嫌いという感情を抱いてしまうのは、すべて外的な要因による」という考えは幻想です。なぜならば、AさんとBさんの例でもわかるように、
「あなたは、その人を嫌うという決定も、嫌わないという決定も、どちらも自分の意志によって下せる」
からです。
そして、ここが今日の話でもっとも重要なポイントです。
あなたが真に恐れているのは、
「自分がいつも頭の中で行っている、嫌いな人を生み出す創造のプロセスを、自分に対して行われること」
だということです。
それは、集団の中で誰かをいじめている人が、「いつか自分もいじめられる側になってしまわないだろうか」と怯るのに似ていないでしょうか。
いじめっ子がこの不安から逃れる方法はひとつしかありません。いまこの瞬間に、いじめるという行為をキッパリとやめることです。
相手が何を考えているか「本当のことはわからない」以上、「もしかしたら自分はこの人に嫌われているんじゃないか?」という思いはすべて空想や妄想です。
もちろん、本人に確かめたら「うん、嫌いだ」と言われる可能性はありますが、その答えを聞くまではけっして事実とは言えません。
ここで私たちは、次のことをしっかりと自問しておくべきなのです。
「では、どうして私はそのような妄想を抱いてしまうのだろう?」
バックナンバー「他人の言動に負の妄想を抱かないための修正」で、
「自分を見るように人を見る」
という仕組みについて書きました。
「悪口を言われているんじゃないか?」「見下されているんじゃないか?」という妄想をしてしまうのは、自分が過去に誰かの悪口を言ったり、他人を見下したりした経験があるからです。
「自分もやるのだから、他の人も自分に対してやってくるに違いない」
これが、人間関係で生じるさまざまな「恐れや不安」の根源だと私は考えます。
ここまでで、「人に嫌われたくない!」という不安に対する、とてもシンプルな解決方法が判明したはずです。
「いまこの瞬間から、嫌いな人を創り出すという選択をやめる!」
と意志決定すればいいのです。
けっして、すべての人を好きになる必要はありません。ただ、あなたがされたくないと思うことを、自ら手放せばいいだけのことです。
なによりも、この方法ならすべてがあなたの中で完結できます。人の心を読む必要もなければ、無数のタブーリストを入手する必要もありません。もちろん、「嫌われないために自分を変える不毛な努力」からも解放されます。
私は職業上、毎日のように初対面の人と出会っています。グッドバイブスに関わるセミナーやパーソナルセッションだけでも、その数は今年に入ってから500人を超えています。
もちろん私も人の子です。パッと見た第一印象や、質問の仕方、視線の向け方などによっては、その人を拒絶したいという誘惑に駆られることもあります。
でも、もしその場で「嫌いな人」を創造してしまったら、彼や彼女といるあいだずっと「この人に嫌われているんじゃないか?」という不安を抱き続けることになるでしょう。そうなればもう、「平安な心」で話し続けることは不可能です。
そんなときは、先の「嫌いな人を創り出すという選択をやめる!」を思い出し、すかさず実行するようにしています。不思議なことに、その瞬間、それまで私が見ていた緊迫しまくった世界が、とても穏やかな景色へと一変するのです。
このブログで書いてきた他の話と同様に、今日のメソッドもしっかりと実証済みです。ぜひ、いつものように「だまされたと思って」トライしてみてください。
あなたの中に嫌いな人がいなくなればなるほど、「嫌われたくない!」という不安も次第に小さくなっていくはずです。
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