今日は、私たちのもつ「自分を見るように人を見る」という単純な仕組みについて考えてみたいと思います。
パーティーの会場など多くの人が集まる場所で、あるグループが自分のほうをチラ見しながらひそひそ話をしているのを目撃したとします。あなたはドキッとして、「あ、いま私の悪口を言っているに違いない」と思ったことはないでしょうか。
あるいは、職場の同僚や上司があなたの話を軽く受け流したように見えたとき、「もしかしたら自分は見下されているんじゃないか?」と感じたことはないでしょうか。
もちろん、どちらの判断も拙著『グッドバイブス ご機嫌な仕事』やこのブログで言うところの「意味づけ」に過ぎません。
実際には、パーティーの人たちは別の話題で盛り上がっていたかもしれないし、同僚や上司は単に忙しくて、たまたまそのときあなたの話に集中できなかっただけかもしれないのです。
もちろんそんなときは、このブログに書いてきた「意味づけを手放す方法」を試してみるのもひとつの手ですが、それ以前に、このような状況でよけいな妄想をしないために、日ごろからやっておける予防策のようなものがあります。
それは、
「自分がそうされたら嫌だと感じることを、他人に対してしないようにする」
習慣をつけることです。
子どものころ、学校や家庭で「人の嫌がることをしてはいけない」と言われました。それを単なる道徳的な教えとしてではなく、自分がムダに「恐れや不安」の妄想を抱かないための深遠な仕組みとして理解するということです。
ごく単純にイメージしてください。もし、あなたが生まれて一度も人の悪口を言ったことがないとしたら、ひそひそ話をする一団を見て「自分の悪口を言っている」などと想像することができるでしょうか。
もし、あなたが人を見下すという行為をしたことがなければ、誰かの言動に対して「いま自分は見下されている」などと判断することがあるでしょうか。
他人の言動に負の意味をつけたくなるのは、あなたが過去に同じような負の言動を行ったからにほかなりません。これが、冒頭に書いた、
「自分を見るように人を見る」
という仕組みです。
ぜひ、次に誰かの悪口を言う機会があったら、心の奥底で得体のしれない恐怖を感じていないかをチェックしてみてください。おそらく、罵詈雑言を吐きながら、実は少し心臓がドキドキしていることに気づくはずです。
場合によっては、このスリルを快感と勘違いして、悪口を言うことがストレス発散になっているように感じることもあります。ところが、このときのドキドキはそんな生やさしいものではありません。その正体は、
「いつか自分も誰かに同じようなことを言われるかもしれない」
という未来への恐れなのです。
私たちはよく、「あの人は絶対、こう思っているに違いない!」「あの人の考えていることは手に取るようにわかる!」などと、かなりの確信をもって読心術のプロのような予測をします。
その根拠も実は、「だって自分もこういうときにそう思ったことがあるから」という、「自分を見るように人を見る」仕組みを使っているだけのことです。
そこで提案です。もし、「誰かに悪口を言われている」「自分は見下されている」「どうせ、自分なんて誰からも評価されていない」などという、エネルギーを奪われるだけの妄想をしたくないと思うなら、いまこの瞬間から、次のことをキッパリと手放してください。
・人の悪口を言う
・人の批判をする
・ただ不満を言う
言葉として口に出すのはもちろん御法度です。SNSなどに投稿するのもナシです。どうしても何かに抗議する必要があるなら、批判の言葉を「提案」の形に変換してみてください。
心で思ってしまうのは仕方ない部分もありますが、のちに「自分がそう思われている」という妄想に結びつけないためには、できれば「思うだけ」も手放すのがいいでしょう。
繰り返しますが、人を傷つけないとか、人を思いやるといった道徳的な目的のためにそうするわけではありません。あなたが、「自分が負の言動をするように、人が負の言動をしていると妄想しない」ための習慣化です。
どうしても悪口や批判を抑えられない場面に遭遇したら、次のことを思い出してください。
「誰かに向けて言った悪口や批判、不満は、そのまま自分の行動を縛る制限となって返ってくる」
「こんな簡単なこともできないのか!」と批判すれば、あなたは二度とその「簡単なこと」を失敗できなくなります。「上司のくせにころころと方針を変えるなよ!」と不満を言えば、あなたが上司になったときに、一度決めた方針を変えることが難しくなります。
「悪口、批判、不満を口にした数だけ、あなたは自由を奪われる」
と言ってもいいでしょう。つまり、そもそも先に挙げた手放す項目には何のメリットもなかったというだけのことです。
私もこのことを習慣化してそろそろ4年が経ちます。いまでも年に数回はうっかり不満を漏らしたり、イラッとしたりすることがありますが、悪口や批判の類いはまず口に出しません。心で思い始めたら即座にやめるようにしています。
それでも、ストレスが溜まるといったこともなく、以前よりもはるかに平和に暮らせています。
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