ボケとツッコミで「意味づけ」を手放す方法

バックナンバー「考えていることの象徴である言葉を見張ろう」で、

「私たちの考えていることは物の見方をそのように固定し、次第に自分の言動にも影響を与え始め、結果として目の前に考えたとおりの現実が創造されていく」

と書きました。

そこで、「難しい」「恐い」「不安だ」「絶対に○○ない」などの「言葉」を口にする瞬間を見張りながら、自分が考えていることを確認する方法を提案しました。

今日はこのやり方を一歩進めた「言葉」遊びのようなトレーニングを紹介したいと思います。

たとえば、次に行う仕事の内容がとても複雑なもので、手を着け始めたら間違いなく苦労するに違いないと感じる場面があったとします。

普通なら頭のうしろで手を組みながらこうぼやくところです。

「ああ、めんどくさいなぁ」

拙著やこのブログを読んでいる人なら、この瞬間に自分が何をしているかは熟知しているはずです。

まず、「次の仕事は複雑だ」という「意味づけ」をしています。それが、これまでに何度も手がけてきた仕事で、やるたびに「複雑」と感じるのであれば紛れもない事実のようにも見えます。

けれども、その様子が万人の目に「複雑」に映るのではない限り、やはり絶対の事実ではなく、あなたの「意味づけ」というしかありません。

しかも、実際に実行してみたら、今回だけは想像したほど「複雑」でない可能性も大いにあり得ます。だとすれば、あなたは不確かな「未来の予測」をしていることにもなります。

「苦労するに違いない」も同じように、それが起こるかどうか本当のことはわからない「未来の予測」に過ぎません。

もし、これらのことが自覚できていれば、先のぼやきを次のように言い換えることができます。

「ああ、いまオレは(私は)めんどくさいと意味づけしているよ!」

あるいは、こんな言い回しも可能です。

「ああ、やり始めたら苦労するに違いないと不確かな予測をしているよ!」

ぜひ、実際に声に出してこのように言ってみてください。その調子は、最初の「ああ、めんどくさいなぁ」とまったく同じ、ネガティブな感じでかまいません。

そうしてモヤモヤとした気持ちと一緒に、「意味づけ」や「未来の予測」をしている事実も吐き出してしまえば、あなたは自動的に、そして完璧に、次の瞬間から何をすべきかわかってしまうはずです。

このやり方の最大のメリットは、頭の中だけで「意味づけ」や「未来の予測」を手放そうと努力する必要がないことにあります。

あれこれ考えずとも、自分のしていることを客観的に「言葉」にできた時点で、「はいはい、わかってますって」と、我に返る状態になってしまうからです。

さらに、チームや家族、恋人同士で「意味づけ」や「未来の予測」「罪悪感」を手放すことのメリットが共有できたら、もっとおもしろいプレイが可能になります。

誰かが「ああ、めんどくさいなぁ」と言ったら、その瞬間に仲間やパートナーにこう付け加えてもらいます。

「と意味づけしたんだね♡」

「ああ、またやっちゃったよ。だからオレは(私は)ダメなんだ……」などと言う人がいたら、同じように、

「と罪悪感を抱こうとしてるんだね♡」

とツッコミを入れます。

漫才のボケとツッコミのような感じで愛をもって軽やかにやるのがポイントです。ツッコまれたほうも反省などする必要はありません。むしろ開き直って、「そうだよ、だってそう思うんだから仕方ないじゃない」と返すくらいでちょうどいいと思います。

ボケる方もツッコむ方も毎回、いろいろな気づきを得られるはずです。

自分で言うやり方、仲間にツッコんでもらうやり方、私はその両方を日々、実践しています。もちろん効果は絶大です。なんといっても、優しく自分を追い込めるような気持ちよさがたまりません。

チャンスがあったらぜひ、トライしてみてください。

Photo by Satoshi Otsuka.