いま得られていることを起点に現状を変える

今日は「いま得られていること」について考えてみたいと思います。

数人が集まって、あなたのチームや部署が抱える問題点について話合ったとします。おそらく、瞬く間に「モチベーションが低い」「進め方がよくない」「ルールが甘い」「問題意識が足りない」「仕組みがうまく機能していない」など、数々の「いま不足している事柄」が挙がることでしょう。

そうして会議が終わるころには、メンバーの頭に「このチームや部署にはいいところなど何もないんじゃないか?」「もうダメなんじゃないか?」という疑念が沸き上がることもめずらしくありません。

たったひとりで自分自身の問題について考える場合も同様です。真っ先に、「スキルが足りない」「知識がない」「やりたいことを実現するための能力に欠けている」など、「自分に足りない何か」に目が行くことでしょう。

その不足感はそのまま将来の不安へと変わっていきます。

「このままでは人生の先行きが不透明だ」
「自分は一生、このままで終わるのだろうか?」
「いまからではもう間に合わないんじゃないだろうか?」

さらに、そんな思いを抱きながら周囲を見渡すと、自分以外の人々はみんなうまくやっているように感じてしまい、焦る気持ちは増幅していく一方です。

まさに「お先真っ暗な状態」といってもいいでしょう。

チームや部署であっても、個人であっても、このような「自分(たち)は終わっている感」から抜け出すのは至難の業です。代打逆転サヨナラ満塁ホームランのような、よほどの幸運にでも恵まれない限り、現状を変えるきっかけをつかむことはできません。

そんなときは、それまで洗い出した問題をいったん忘れて、気持ちを落ち着けながらこう自問してみてください。

「いま得られているものは何もないのか?」

あなたが自分について、「そんなことはできてあたりまえだ」「そんなものはもっていてあたりまえだ」と軽視しているものを見直すということです。

まず、あなたは確実にいま生きています。これだけでも実はものすごい奇跡だと捉えられないでしょうか。実際に、この世界で生きているためには、どれだけの条件が必要かを想像してみてください。

さらに、成果に不満があるとしても、あなたはいまの仕事をなんとかこなしているはずです。だとすれば、それもまた「あなたが得ていること」のひとつです。

他にもまだまだ見つかる可能性はあります。どんな小さなものでもかまいません。恋人、パートナー、家族、友人、仲間、コミュニティーなどの人々、もしくは、これまであなが自分の稼いだお金で購入してきたさまざまなモノはどうでしょう?

少しでも「いま得られているもの」や「いまできていること」を発見できたら、

「この足りている部分を起点にして現状を変えられないか?」

を考えてみてください。

私たちはなぜか、

「いったん自分の手にしたものには、次第に価値を見い出せなくなる」

というおかしな特性をもっています。恋い焦がれた相手とつき合った瞬間から興味が半減するあの現象です。

「自分がもっていないものにこそ価値がある」

と考えるクセがあると言ってもいいでしょう。

そうしていつまでも「自分の不足」を追い求めていれば、いつかは先に書いたような「お先真っ暗な状態」にぶつかってしまうのは必然です。

「足るを知る」とは現状に感謝するという意味だと私は捉えています。この感覚は、けっして「現状に満足する」ことではありません。

そうではなく、「いま得られているもの」や「いまできていること」の価値を認め、「いまの自分には、どんなことを始めるにも、最低限の準備だけは整っている」と、感謝の気持ちを込めて信じることではないでしょうか。

Photo by Satoshi Otsuka.