つぶやく自分を大きな自分で見張ってもらう

ときどき、電車の中や道路で、誰に話すともなく「ブツブツ」とひとりごとを言っている人を見かけます。おそらく、あなたは奇妙なものを見るようなまなざしで彼らを眺めていたはずです。

けれども、声に出さないだけで、実は、私たちも頭の中でいつも何かをつぶやいています。中身は文句を言われた上司への恨み節、納得いかないやり方をする同僚への不満、将来の不安、過去に行ったことの後悔といったところでしょうか。

それらは、歩いているとき、ひとりで食事をしているとき、風呂に入っているとき、ベッドに入って寝ようとしたときなどに突然、フラッシュバックしてきて、頭の中を瞬く間につぶやきで一杯にしてしまいます。

そして、私たちはふだん、この「頭のつぶやき」と自分が一体化しているように感じています。つぶやきの内容がネガティブなら、「私はいまネガティブである」という図式です。

ところが、私たちの中にはこの「つぶやく自分」とは別の「大きな自分」が存在しています。頭で考えていることになんら影響されず、いつでも揺れない心を保っていられる「大きな自分」です。

私たちが「いい感じ」、すなわち「恐れや不安のない心」を保つためには、この「大きな自分」の助けを借りなくてはなりません。

あなたの頭が自分の心にダメージを与えそうなことをつぶやき始めたら、まず「大きな自分」のことを思い出してください。次に、頭の上の方に、あなたのつぶやきと一体化していないもうひとりの自分がいるとイメージします。

しばらくすると、いつもの「つぶやいている自分」を俯瞰の視点で見下ろしながら、「いま、オマエは頭でブツブツとつぶやいているぞ」と教えてくれるもうひとりの自分がいることに気づくはずです。これが「大きな自分」です。

一度でも「大きな自分」に出会えれば、それ以降はどんなときでも自由自在に呼び出すことができるようになります。

一日をとおして、できるだけ長いあいだ、この頼りになる存在にあなたのつぶやきの一部始終を見張ってもらってください。とくに、あなたの中から「いい感じ」が消えそうになったときは、すぐに「大きな存在」を呼び出してつぶやきを実況中継してもらいます。

これだけであなたは、どんなときでも恐れや不安を創り出す「つぶやく自分」から解放されるはずです。

Photo by Satoshi Otsuka.