「本気を出す」と長時間労働はまったく違う

拙著「グッドバイブス ご機嫌な仕事」の中に「本気を出す」というキーワードが登場します。もちろん、このブログでも、過去に何度か「本気を出す」ことについて書いてきました。

◎ 本気でやるとその仕事のおもしろさがわかる
「好きな仕事」は探すだけでは見つからない

自分の居場所を探し始める前に「いま目の前にある仕事を本気でやってみる」と、不思議なことが2つ起こり始めます。

ひとつは、あまり興味をもてなかった仕事から自分の「好き」や「得意」が浮かび上がってくること、もうひとつは、自分の個性に紐付いた「本来の役割」に導かれていくことです。

ただし、「本気を出す」ことは、やみくもな長時間労働やワーカホリックとはまった異なります。重要なのは時間の長さではなく、

「その瞬間に注ぎ込むエネルギーの質量」

です。

身体を動かす瞬間、言葉を発する瞬間、一瞬一瞬に「これを受けとる人のために、自分のために、いいものを創りたい!」という思いと、そこから生まれるエネルギーをどれだけ込められるかが問われるのです。

その意味で、9時から5時までの就業時間内で仕事を切り上げたから、残業をしないからといって、その人が本気でないなどというのはまったくのナンセンスです。

かつて私がいた出版社のように、業種によってはどうしても終わりが読めない仕事もあります。反対に、さまざまな都合によって1日に数時間、週に数日しか働けないということもあるでしょう。

どのような状況であっても、「本気を出す」ことと働く時間の長さはまったく関係ありません。1時間であろうと100時間であろうと、瞬間の重さはいつも同じだからです。

実際にやってみればわかりますが、「その瞬間にエネルギーを注ぎ込む」働き方は、イヤな疲労感を伴いません。疲労がゼロとはいいません。けれども、何もしたくなくなるような、気力がすべて失せるような、そういう苦しいだけの疲れ方はしないはずです。

なんといっても、「本気を出す」ことの最大のメリットは「それをやったからといって誰も損をしない」ところにあります。ぜひ、だまされたと思ってしばらく実践して、2つの不思議なことを自身で体験してみてください。

Photo by Satoshi Otsuka.