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まずい事態を想定して保険を打つのをやめる

このところ、連日にわたって「イリュージョン」について書いています。何よりも、このシリーズで私が伝えたいのは、

「私たちは、現実とイリュージョンの2つの世界を往復しながら生きている」

という事実についてです。

バックナンバー「イリュージョンから抜け出すためのメソッド」で書いたように、「現実」にいるときの私たちは、自分や他の人々、そしてこの世界のありのままを知ろうとしています。五感によって外の情報とつながる「外向きモード」です。

反対に、「現実」を見ようとせずに、想像や予想によって、自分の頭の中だけで答えを出そうとするとき、私たちは「イリュージョン」のほうにいます。これが五感を閉ざして世界から切り離された「内向きモード」です。

要は、現実を把握する前に、「思考」に頼って何かを先取りしようなどと思わなければいいだけなのですが、多くの人にとってそれは「言うは易く行うは難し」となっています。

そこでたまには、「思考」ではなく「行動」のほうにスポットを当ててみようと思います。考えを止めることに比べれば、目に見える「行動」を変えるのはそれほど難しくないからです。

そして、「妄想を生み出しやすい行動」というのがたしかにあります。今日は、私も日々、「絶対にしない!」と心がけている禁じ手のひとつを紹介します。

それは、

「まずい事態を想定して、保険を打っておくのをやめる」

というものです。

「保険」という言葉の範囲が広すぎて、何を指しているのか曖昧ですが、今話を読みながらあなた自身でその対象を決めてください。

私はとくに、

「自分が発する保険的な言葉」

に気をつけるようにしています。「相手にわるい印象を与えないように」という懸念から、つい口にしてしまう言葉といってもいいでしょう。

たとえば、メールを書いていて「あ、長いかな?」と思ったら、「長くなりましたが」「長文にて失礼します」などのエクスキューズを入れるはずです。

これはおそらく、相手に「うわ、長ぇなぁ」と思われるのはイヤだという気持ちの現れだと思います。

最初に「長文メールを書いた」という自分の行動があります。次に、「この長さを不快に思われなくない」という「恐れや不安」がやってきます。そこで、「長くなってすみません」と保険を打つことを選択します。

これをシンプルに表すと、

「自分の行動」→「恐れや不安」→「保険」

という図式になります。

ひと目見ればわかるように、最後の「保険」は拙著『グッドバイブス ご機嫌な仕事』で書いた「恐れや不安に基づく選択」にほかなりません。

このままでは、メールを送ったあとに「相手は不愉快に感じていないかな……」と妄想したくなるのは必然の流れなのです。

そのような負のイリュージョンを生み出さずに、平安でいるためには、この図式から「恐れや不安」を消しておかなくてはなりません。その方法は2つあります。

ひとつは「自分の行動」を修正することです。ここでは、「エクスキューズするくらいなら、そもそも長いメールを書かなければいい!」という選択を指します。

具体的には、メールをできるだけ簡潔な内容に書き直すか、「詳しくは直接、会ってお話しましょう」とだけ伝えて、テキストでのやり取りをあきらめるかすればいいのです。

ただ、最低限の情報だけで長文になるケースもたしかにあります。そのまま送るしかないとすれば、それが自分のやるべきことです。

そんなときは、そもそも文章の長さを気にしたり、エクスキューズを入れたりする必要などなかったことに気づき、堂々と長文メールを送信すればいいだけです。

これが2つめの選択です。

「長くなりましたが、と保険を打つのをやめる」

のです。

2つの選択をわかりやすく言い換えるとこうなります。

「保険を打ちたくなるような行動を修正するか、修正する必要がないと思うなら、保険など打たずに真っ直ぐやり切る!」

どちらを選んでも、先の図から「恐れや不安」は消すことができます。

ほかにも、会話の中で、

「これを言うと気をわるくするかもしれませんが」
「余計なことかもしれませんが」
「私が口を挟む問題ではないかもしれませんが」

などの言葉を発したくなったら、真っ先にこの話を思い出してください。これらはすべて「保険」です。

「いやいや、それは気遣いというものだよ」と思ったとしたら、このとき、あなたの頭の中で「よくないイリュージョン」が生まれ始めていないかを確かめてみてください。

先に挙げたようなセリフを言うことで、本論を伝える前から「いい感じ」でなくなっているとしたら、おそらくそれは「気遣い」ではありません。相手のことを思いやりながら、自分がバッドバイブスになることはありえないからです。

さらにいえば、相手もあなたのその様子を察知して、身構えるか、ドキッとするか、「なんだか面倒くさそうだな」などの嫌な感じを抱くかするでしょう。

あなたも相手も最初から「いい感じ」でないならば、この話がうまくいくはずはありません。すべては出だしのエクスキューズが原因です。何のことはない、「保険が裏目に出ている」ということです。

ここに、今話のもっとも重要なポイントがあります。

「保険を打とうとすれば、恐れや不安が現実になる可能性が高くなる」

のです。

「相手が気をわるくする」と確信しているなら、「言うのをやめる」選択もできます。何としても言わなければならないと確信しているなら、自然と「恐れや不安」を引きずってしまうような「保険」など手放して、真っ直ぐ行くのが最善です。

とは言っても、私もいまだにセミナーなどで「こういう話をすると抵抗を感じるかもしれませんが」「この話はかなり長くなってしまいますが」などのエクスキューズを入れてしまうことがあります。まだまだ未熟なのです。

ただし、「あ、いまオレは保険を打ったぞ!」と、自分の行動に気づけるよう心がけてはいます。そのうえで、相手の反応をしっかりと確かめます。結果はほぼ間違いなく、先に書いたとおり、受講者が身構えてしまうなどの「裏目」に出ます。

そのたびに、「まずい事態を想定して、保険を打っておくのをやめる」という今日の話を思い出し、修正を重ねる毎日を送っています。

冒頭に書いたように、この話を何に適用するかはあなた次第です。まずは、

「自分は日々、どんな行動に保険を打っているか?」

を見張っておくのがいいでしょう。

そのうえで、それらの「保険」によって負の現実を創り出しているように感じたなら、2つの選択肢のどちらかを選んでみてください。

もう一度、別の言葉で書いておきます。

A:「リスクと感じるなら、それを生み出す行動を修正する」
B:「行動すると決めたら、リスクと思う気持ちを手放す」

これが「イリュージョンを創り出さない選択」だと私は考えます。