「平安な心」の恩恵を体感するトレーニング

今日のテーマは「平安な心」です。グッドバイブスとは「いい感じの思いを乗せた波」。そしていい感じとは「恐れや不安のない平安な心」でいること。

拙著『グッドバイブス ご機嫌な仕事』でもこのブログでも、もっとも重要なキーワードである「平安な心」が、私たちにどのような恩恵をもたらしてくれるのか、その状態にいたるためには何をすればいいかを書いてみようと思います。

まずは言葉の定義からいきましょう。私が言うところの「平安な心」とは、

「さざ波ひとつ立っていない、静かで穏やかな心」

を指します。

あらゆる悩みから解放され、心配なこともなく、怒りや悲しみなどの負の感情をひとかけらも抱いていない状態です。気負い、緊張、焦りなどの前のめりな感覚とも無縁で、身体の力が抜けて完全にリラックスしています。

だからといって、嬉しさや喜びに溢れているわけでも、高いモチベーションをもってギラギラしているわけでもありません。上にも下にも振れていない、極めてフラットな心です。

文章を読むだけでは「それのどこがすごいの?」と思うかもしれません。最大のポイントは「恐れや不安」をまったく抱いていないことにあります。

このブログでも繰り返し書いてきたように、すべての「恐れや不安」は、望ましくない未来を想像することや、自分で勝手な「意味づけ」することによって生まれます。このいわゆる「妄想」だけでも、私たちは膨大なエネルギーを消耗します。

加えて、「恐れや不安」によってもたらされる悩みや緊張や負の感情は、胸のあたりが重たい、胃が痛い、頭痛がする、倦怠感がひどいなど、私たちの身体に何らかの異変を起こさせます。

これを車にたとえるなら、ガス欠寸前で、オイルも不足し、エンジンからブレーキ、サスペンションまで、ありとあらゆるところに不具合を抱えながら走っているようなものです。

とても残念なことに私たちの多くは、このような状態を「ふだんの自分」「いつもの自分」とみなして生活しているのです。

けれども私たちは、そんな整備不良をすべて解消して、自分を新品同様にオーバーホールする手段をもっています。

それが「平安な心」です。

つまり、「さざ波ひとつ立っていない、静かで穏やかな心」とは、私たちが、

「高性能かつ高速モードであらゆることを行える自分」

を取り戻せる場所なのです。

もっとも高いパフォーマンスを誇り、判断力や何かに気づく能力も冴えわたり、公平さや寛容さも兼ね備え、つねに「愛の選択」ができる私たちの最強モード。これを実現してくれるのが「平安な心」です。

さて、ここからは実践編です。このような恩恵を実際に体感しながら、自然と「平安な心」でいる習慣が身につくトレーニング法を紹介しましょう。

まず、あなたの生活の中から、

「これだけは、何としても平安な心で行いたい!」

と思う行動をひとつだけ探してください。

ジャンルは問いません。仕事でもプライベートでも、自分にとって大切なことでも、些細なことでも大丈夫です。

妻や夫との会話、子どもとの遊び、食事や家事、ガーデニング、趣味の何かでもいいでしょう。もちろん、日々の仕事の中であなたがもっとも重要と考える事柄でもOKです。

ちなみに、私の場合はこのブログがまさにそれです。過去に何度も経験していますが、「この話はつまらないんじゃないか?」「このテーマは書くのが大変じゃないか?」などの「恐れや不安」が少しでも沸き上がると、凍り付いたようにピタッと筆が止まってしまいます。

毎日、決まった時刻に更新するためには、やはり「平安な心」をもって書き始めることが不可欠なのです。

私のブログのように「何としても平安な心で行うこと」をひとつ選んだら、それをする直前にかならず次のことを確認してください。

「これから自分の決めたことが始まろうとしている。そんな私はいま、平安な心をもっているだろうか?」

日によってはかなり疲れていたり、ひどい出来事に遭遇して心が揺れまくっていたりすることもあります。理不尽なことで説教された上司への恨み節が止まらないこともあるでしょう。

でも、ここが勝負所です。何があろうと、「いまこの瞬間にモードチェンジする!」と固く決意して「平安な心」を取り戻してください。

けっして難しいことではありません。どれだけ複雑な心境に思えても、どれだけ被ったダメージが大きいと感じていても、やるべきことはたったひとつ、

「平安な心を妨げるようなことを考えるのはやめる!」

と強い意志をもって宣言するだけです。

背筋を伸ばして、目の前を真っ直ぐに見据えます。肺の限界まで鼻から大量に空気を吸い込み、心の中で「よし!」と叫びながら、一気に口から息を吐き出してください。このとき、頭の中で考えていたいっさいを外に放り出すようにします。

これで数秒間は「妄想」が止まるはずです。再び「恐れや不安」がやってくる前に、先に決めた「何としても平安な心で行うこと」を始めてください。

終わりを意識せず、ゆっくりとていねいに、渾身の思いを込めて、一心不乱に実行します。そう、

「いまここ」

でです。

やっている最中に心がざわつき始めたら、先の深呼吸と「よし!」をやり直します。まさに、あなたの意志が試される場面です。「意地でも心を揺らすものか!」という強い決意のもと、「妄想」したくなる自分を追い払ってください。

さすがに、24時間これをやれと言われたら、私も完全にお手上げです。けれども、一日のうちのたったひとつの行動であれば、それほど無理な相談ではありません。

ぜひ、最初は夫婦の会話など、気軽なところからトライしてみてください。ひとつ成功したら別の行動、また新たな行動と、「平安な心」を発揮する範囲を広げていってもいいでしょう。

たとえうまくいかなかったとしても心配はいっさい無用です。失うものなど何もありません。ふだんの自分、いつもの自分がそこにいるだけのことです。

Photo by Satoshi Otsuka.