「何もわかっていない」姿勢で問題に挑もう

私のセミナーやパーソナルセッションには、家庭の問題から会社経営の懸念にいたるまで多種多様な相談が寄せられます。けれども、悩みの質や痛みの度合いに関わらず、私が提案する最初のメソッドはいつも同じです。

「私は本当のことを何もわかっていない」

このことを真摯に受け入れてもらうことからすべてがスタートします。

今日は、なぜ問題を解決するための第一歩として「自分は何もわかっていない」ことを前提とするほうがいいのか、それによって何が変わるのかについて書いてみようと思います。

たとえば、ある人が次のような質問をしたとします。

「いまの仕事が自分に合っていない気がしています。会社の方針にも納得できない部分が数多くあります。転職も視野に入れていますが、自分のキャリアや実力を考えるとやはり躊躇してしまいます。どうすればいいでしょうか?」

あなたも一度や二度は相談されたことがあるはずのよくある悩みです。でも、その中身をよく吟味してみてください。この話には不思議な違和感があるように感じないでしょうか。

それは、

「一見、質問のように見えて、実は質問自体がこの人の答えになっている」

という点です。

その根拠を具体的に挙げてみましょう。

「仕事が自分に合っていない」
「会社の方針に納得できない」
「できれば転職したい」
「キャリアや実力には自信がない」

質問者の中でこれらすべてが現実のこととして確定しています。

ということは、現時点でこの人が取り得る行動は、

「嫌な会社に残るか、恐い転職に挑むか?」

の二者択一ということにならないでしょうか。

本当は無限にあるかもしれない選択肢の中から、この2つだけに絞り込まれている時点で、すでにこの人が質問をしているのではなく、何らかの「答え」を出していることは明らかです。

でもそれだけではありません。さらに厳密に見ていくと、二択どころか、この人には逃れようのないひとつの答えしか残されていないことがわかります。

「どちらにしても、自分にとって好ましくないことを選ぶしかない」

そしてこれが、「なぜこの質問者は悩んでいるのか?」の理由でもあります。それはほかでもない、この人が質問の形で話をしながら、無意識のうちに「好ましくないことを選ぶしかない」という唯一の答えを出してしまったからです。

どちらの道にも進みたくない。だからどちらも選びたくない。この不思議な思考回路こそが、私たちの中に悩みを生み出すメカニズムです。

ここまでを読めばわかるように、この自滅的な迷いに入ってしまうと、もう根本的に問題を解決することは不可能です。清水の舞台から飛び降りる覚悟で決断できたとしても、本人にとってそれは、いつまでも不本意な選択であり続けます。

なぜこのようなおかしなことが起こるのでしょうか。すべての根源は、「仕事が自分に合っていない」「会社の方針に納得できない」「できれば転職したい」「キャリアや実力には自信がない」などの「確定させてしまった現実」にあります。

そして、それらを現実として固定させたのが、

「自分は本当のことを何でもわかっている」

という前提なのです。

「仕事が自分に合っていない」のは本当でしょうか。この人はどうやってそれを確信したのでしょうか。何度か失敗したからでしょうか。楽しくなかったからでしょうか。けれども、楽しくないのはこの人のいまの気持ちが原因という可能性も十分にあり得ます。

納得できないという「会社の方針」はどうやって確かめたのでしょうか。そもそも、会社は人ではありません。だとすれば、その方針とは誰が決めたことなのでしょうか。直属の上司でしょうか。それとも経営者から細部にわたって直接ヒアリングしたのでしょうか。

「キャリアや実力に自信がない」根拠は何でしょうか。転職診断テストの結果でしょうか。それとも、数社の入社試験を実際に受けた結果でしょうか。もしそれが事実だとしたら、そんな状況で本当に「できれば転職したい」と思うでしょうか。

もちろん、中には当たっていることもあるでしょう。私もそれがゼロとは思いません。でも、現実として見ていることの多くが、実はこの人の「想像」によって創られている可能性は大いにあります。

もしそうだとしたら、

「自らが勝手に確定させてしまった現実が、自分の選択を狭めている」

ことになります。

この詰んだ状況、どんずまりの状況から抜け出して自由になるために、

「私は本当のことを何もわかっていない」

ことを受け入れるのです。

そうして、あらゆる先入観や思い込み、過去のいきさつをすべて手放し、すでにしてしまった判断もいったん保留して、まっさらな自分の目でもう一度、想像ではないリアルな現実を見に行く。

これが悩みや迷いから真に解放されるために必要な姿勢だと私は考えます。

何かの問題に直面したときには、解決策を考える始める前に、まず次の4点を事実として受け入れているかを確認してください。

① 私は未来に何が起こるかをまったくわかっていない。
② 私はこの出来事が起こった本当の意味をまったくわかっていない。
③ 私はこの人が何を考えているかをまったくわかっていない。
④ 私は自分について本当のことは何もわかっていない。

「何もわからなければ、何もできないじゃないか」と思うかもしれません。たしかに、慣れないうちは何か漠然として拠り所のない感じがするでしょう。

でも安心してください。それは、これまでよりも大幅に選択肢が増えたことの証しです。けっして恐れることなく、少なくとも「どちらも選びたくない!」という迷いのループからは抜け出せたと考えてください。

先の質問者の場合なら厳しい二択のほかに、「やりがいを感じられる他部署への異動を考えてみる」「いまの環境のまま一か月だけ本気でやってみる」「馬が合わなかった上司と腹を割って話してみる」「こっそり楽しそうな副業を始めてみる」などの、それまで予想もしなかったミラクルな答えが降りてくるはずです。

Photo by Satoshi Otsuka.


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