悩みを話すことで自分の妄想を見つける方法

今日も昨日に続いて「妄想に対処する方法」を紹介しようと思います。前話では、私たちがやりがちな妄想のパターンや、自分の思い癖を知るという対策について書きました。

基本的にこれはひとりで行う取り組みです。かなり深刻に思える出来事に遭遇した場合、自力で負の想像を頭から取り除くのは難しいと感じるかもしれません。

今日紹介するのは、そんなときに役立つはずの、第三者の助けを借りて「話すこと」「聴くこと」によって妄想を見つけるやり方です。

とその前にもう一度、私がなぜここまでして妄想を手放すことにこだわるのかを確認しておきましょう。それは、私たちに次のような悪影響をもたらすからです。

① 負の想像をすることで、エネルギーの大半を消耗してしまう。
② あらゆる出来事が妄想したとおりに見えるため、自分の言動が変わっていく。結果として「望ましくない現実」を創造してしまう。
③ 強い思い込みによって、解決のための選択肢を著しく狭めてしまう。

簡単にまとめるなら、妄想は「いまやるべきことを行う気力を失い、必要以上に状況を悪化させる」ということです。昨日から書いてきたことは、すべて本来の能力を発揮できるグッドバイブスな状態でいるための努力だと私は考えます。

では始めましょう。まず、信頼できる友人や恋人、パートナーをひとり選びます。もちろん、自分でふさわしいと思えるなら、親や兄弟、上司、先生などでもかまいません。

相手が決まったら、こう伝えてください。

「私はいまから自分の悩みについて話します。もちろんアドバイスは大歓迎ですが、それよりも、私の言葉の中から、単なる想像や思い込みで言っている事柄を探してほしいのです」

もし、相手に「思い込みかどうか判断するのは難しいな」と言われたら、

「そうでない可能性があるにも関わらず、そうであると結論づけていること」

を見つけてほしいと説明してください。

加えて、以下のワードに注目しておくように頼みます。

「はずなんだ」
「たぶん」
「みたいなんだ」
「だそうだ」
「と思うんだ」
「に違いない」
「に決まっている」
「するしかない」
「するべきだ」

以上で準備完了です。あなたの頭の中にある不安に思うこと、困っていること、どうしていいかわからないことなどからひとつを選んで、できるだけ詳しく相手に伝えてください。

悩みについて話しながら、すでにあなたの中で大きな変化が起こっていることに気づくはずです。「そうでない可能性があるにも関わらず、そうであると結論づけていること」を口にしたとたん、「あっ、これか!」と気づく場面に何度も遭遇するでしょう。

これだけでも効果は抜群です。でも、自分ではわからなかった思い込みや想像がまだいくつも残っています。すべてを話し終えたら、相手に結果をレビューしてもらってください。

「これもそうじゃないかな?」と言われた事柄の中に、「おお、たしかにそれも現実ではない!」と思えるものがあったら大成功です。相手に、次のステップも協力してくれるようお願いしてみます。

「よかったら、同じやり方で君の悩みも聞かせてくれないかな?」

そう、今度はあなたが相手の妄想をチェックする番です。先に挙げたワードに注目しながら、相手の話の中に想像や思い込みが含まれていないかを注意深く観察してください。紙にメモしながら聞くのがおすすめです。

あなたも、相手の話の中にいくつかの妄想を発見するでしょう。同時にそれが、

「この人の悩みを固定化させ、選択肢を大幅に減らしている」

という事実に気づくはずです。

「たしかにそうなっている!」とわかったら、結果を相手に伝える際に、その隠されてしまった可能性を添えてみてください。いくつかの例を挙げておきましょう。

「もう時間がないと言ったが、本当にそうだろうか?」
「どうしても参加すべきと言ったが、欠席するという選択はないだろうか?」
「経営者が聞く耳をもたないと言ったが、あなた自身でそれを確かめたのか?」

以上が「話すこと」「聴くこと」によって妄想を見つけるやり方です。

さらに、今話においてはオマケのようなものですが、このメソッドには悩みそのものを和らげる効果もあります。

なぜならば、このフォーマットに則った会話によって、ふつうの悩み相談ではありえない次のような変化が起こるからです。

① 悩みの中から妄想を探すことで、相手の思い込みに同調することがなくなる。
② 相手に見えていない新たな可能性だけを提示できる。
③ すべては妄想から生まれるという悩みの構造がわかるため、内容が軽くても深刻でも、同じように対応できる。

①はこの手の相談によくありがちな、「それはひどいね!」と揃って妄想を始めてしまい、最後には救いのない悪口大会になる事態を避けられるということです。

また、ここでのアドバイスは、相手に自分の意見や正しさを押しつけるのではなく、ただ選択肢を増やす手伝いをしているだけです。これによって、聞く側はあまり抵抗感を抱かずに受け入れられるというのが②です。

妄想とは非現実、すなわち「無」です。無から生まれるものに軽いや重いなどの程度が存在するはずがありません。つまり本当は、私たちの抱える悩みにも、深刻かそうでないかの差などないのです。

相手の悩みから妄想を探す会話をとおして、「ん? 最初はひどい問題に思えたけど、聞いているうちに、かならずしもそうでもない気がしてきたな」と、あなたもこのことを実感するはずです。これが③の変化です。

実は今回紹介した「妄想に対処する方法」は、毎月、鎌倉の「朝食屋コバカバ」で開催している「グッドバイブス ご機嫌な生き方塾」で定番となりつつあるワークのひとつです。

こちらでは、参加者12名が話し手と聞き役に分かれ、11対1のグループセッションで同じことを行います。ひとりの話が終わると、次々と「これは妄想だと思います」「○○という選択もあると思います」などのレビューが飛び交います。

文字だけで読むと、何か過酷なやり取りが交わされるように感じるかもしれません。でも、実際に現場で行われるのは、いたって「愛のある対話」なのです。

誰も自分の「正しさ」を押しつけません。そればかりか、苦しんでいる相手に本人が気づいていない可能性を提示できることに、みな「与える喜び」を感じているようです。当然、悩みを発表する側にもそれが伝わり、みな「ありがとうございます!」といって着席します。

今話のメソッドを実施するのに「ふさわしい相手」が見つからなかったら、ぜひ「グッドバイブス ご機嫌な生き方塾」に参加してみてください。次回開催は8月30日金曜日です。きっと、鎌倉から帰宅する際には、それまでより軽くなっているあなたを実感できるはずです。

Photo by Satoshi Otsuka.