ひとりだけではグッドバイブスは完結しない

拙著『グッドバイブス ご機嫌な仕事』やこのブログの読者のみなさんから、よく次のような報告が寄せられます。

「いつでもグッドバイブスでいられるように実践しています。でも、ちょっとしたことですぐに逆戻り。やはりいい感じを続けるのは難しいですねw」

今日はそんな方のために、ちょっとしたアドバイスをお届けしようと思います。

バックナンバー「超越感や卓越感を手放し、見下すのをやめる」で書いたように、グッドバイブスを確かなものにするプロセスは3つの段階を経ます。

第1段階:ひとりのときはグッドバイブスでいられる。
第2段階:周囲の人々の言動や、思いがけぬ出来事に影響されることなく、いつでもグッドバイブスでいられる。
第3段階:自分のグッドバイブスを周囲の人々に伝播できる。

第1段階は、私たちの悩みが「意味づけ」や「未来の想像」、すなわち幻想によって生まれることを理解し、そのような考えを手放すことに取り組むトレーニングのフェイズです。

ここで誤解してはならないことが2つあります。

ひとつめは、グッドバイブスを携えるための条件である「平安な心」と、その反対の「恐れや不安」を抱いた状態と、どちらを本来の自分と認識するかです。答えはもちろん「平安な心」をもった自分です。

つまり、「グッドバイブスになるために努力する」のではなく、

「グッドバイブスだった自分を思い出す」

と捉えておくことが重要なのです。

特殊な能力を身につけるわけでも、常人が到達できないはるか高みに昇るわけでもありません。ただ、誰もがそうであった「ありのままの自分」に戻るだけです。

2つめは、その「グッドバイブスだった自分を思い出す」道のりは、

「けっして自分ひとりだけでは完結しない」

ということです。

多くの人がグッドバイブスのゴールを「自分が平安な心でいられること」と考えているかもしれません。残念ながら、それではいつでもどんなときでもグッドバイブスを携えることはできません。

拙著の第1章で「私たちはけっしてひとりではしあわせになれない」と書きました。世界でしあわせなのが自分ひとりだけだとしたら、それはゾンビ映画で最後の生き残りになるのと同じで、結果としてしあわせは得られないはずです。

グッドバイブスを確かなものにする道のりもまさにこれと同じです。10人程度の小グループであっても、他の9人がバッドバイブスだとすれば、数分もしないうちにあなたもそれに飲み込まれてしまうでしょう。

おそらく、冒頭に紹介した「ちょっとしたことですぐに逆戻り。やはりいい感じを続けるのは難しい」という報告も、この点を誤解しているからだと思います。

他の人たちは、あなたがグッドバイブスでいるのを妨げる壁ではありません。その幻想を抱いている限り、永遠に難しさは消えないでしょう。真実はその真逆です。

「他の人たちがいるから、あなたはグッドバイブスを確固たるものにできる」

のです。

そして、このことを学ぶフェイズが第2段階です。

第2段階:周囲の人々の言動や、思いがけぬ出来事に影響されることなく、いつでもグッドバイブスでいられる。

まず目の前にいる相手を、これから一緒にソーシャルダンスやフィギュアスケートの演技をする相方だと思ってください。あなたと相手はペアです。もちろん、あなたひとりでは踊ったり滑ったりすることはできません。

次に、

「相手はつねにあなたの状態に反応して変化する」

という仕組みを頭に入れておきます。

では、演技スタートです。相手は辛辣な言葉をあなたに投げかけます。態度も極めてよくありません。けれども、第1段階をクリアしたあなたは、怒りや不機嫌さをもつメリットをすでに手放しています。

加えて、相手の言葉に自分なりの意味をつけて、勝手な妄想を膨らませることもしません。心が揺れそうになったら、そのような感情を生んだ自分の判断を疑い、相手がおかしな言動をするにいたった「本当の意味」を探ろうとします。

言動という結果ではなく、原因である相手の「恐れや不安」に注目していると言ってもいいでしょう。このとき、あなたの中には自然と「興味」が沸き起こります。そして興味とはすなわち愛です。

自分が投げた辛辣な言葉に当然、攻撃で応戦してくることを覚悟していた相手は、予想とは真逆の態度をとるあなたに最初は戸惑うでしょう。一度は防御の態勢を強めてくるかもしれません。

けれども、遅かれ早かれ先の法則が適用されることになります。

「相手はつねにあなたの状態に反応して変化する」

変化の度合いは人によっても状況によってもさまざまです。あなたが期待するほど穏やかになってくれるとは限りません。けれども、あなたも攻撃で返した場合と比べれば、天と地ほどの差が現れることは確実です。

ここであなたは次のことを確信するのです。

「ああ、どうやら私はグッドバイブスな自分に帰れたようだ。相手が本来の彼や彼女に戻ってくれたのがその証しだ!」

あなたのグッドバイブスによって相手は本来の自分を思い出し、その様子を見ることで、あなたも「ありのままの自分」がどうであったかの確信を強めます。

以上で、あなたと目の前にいる相手とのペアの演技は終了です。

いかがでしょう。なぜひとりではグッドバイブスの旅が完結しないのか、なぜ「他の人たちがいるから、あなたはグッドバイブスを確固たるものにできる」のか、その秘密をわかっていただけたでしょうか。

ぜひ、まわりにいる人たちをひとりの例外もなく、

「自分をグッドバイブスに導いてくれる大切な相方」

とみなしてください。

「この人たちさえいなければ、いくらでもグッドバイブスでいられるのに……」と考えているあいだは、第2段階をクリアすることはできないということです。