いろいろと手放したあと何を頼りにするのか

昨年の11月から始めたこのブログも、あと少しで150話になります。なんとなくひとつの節目のような気がして、「全話をとおしてもっとも頻繁に登場した言葉は何か?」を考えてみました。

正確にカウントしたわけではありませんが、間違いなく上位にランキングするのは「手放す」ではないかと思います。試しに検索してみたところ、なんと146話中、19話のタイトルに「手放す」が入っていることがわかりました(笑)。

それはもう、自分でも笑ってしまうほどいろんなものを手放しています。「不機嫌でいることのメリット」「損得勘定やリスクヘッジ」「計画」「意味づけ」「防御」「判断」「用意」「待つという行為」「考え」「知っている」「超越感や卓越感」「将来の不安」「終わりの意識」「不足感」「罪悪感」などなど。

そしてついに前話では「自分の正しさ」まで手放す始末。あまりに手放してばかりなので、このブログを読みながら「いったい、自分は何を頼りに生きればいいんだ?」と、大きな疑問を抱いている人も少なくないでしょう。

そこで今日は、「意味づけ」や計画、防御、正しさなど、それまで人生の拠り所としていたものを手放そうとするとき、その代わりとして「何を自分の支えにすればいいのか?」について書いてみたいと思います。

私は、どんなピンチに直面しようとも、次の2つが間違いなく自分を守ってくれると確信しています。

① なにがあっても絶対に損なわれることのない自分自身の価値
② 最後にはかならずうまくいくようにできているこの世界の仕組み

まずは①の「自分自身の価値」です。拙著『グッドバイブス ご機嫌な仕事』でも書いたように、この宇宙のあらゆる物質とエネルギーが凝縮する原初の点には私たち自身も含まれていたはずです。

だとすれば、ひとつの種から育った植物のすべての「部分」の価値が「全体」の価値と等しいように、私たちにもこの宇宙全体と同じ価値があるということです。

このような説明では実感が湧かないという人に、私はこんな質問をしています。

「17歳になるあなたの愛するお子さんが、ある出来事をきっかけに生きる希望を失い、ひとりで家を出て無気力で自堕落な生活を送るようになったとします。1年間、探し続けてようやく居場所を見つけたあなたは、彼や彼女に何を言ってあげたいと思うでしょうか?」

表現は人によって異なりますが、おおよそ次のような答えが返ってきます。

「さあ、一緒に帰ろう。きっといまからでもやり直せるよ」

ここから私は、娘さんや息子さんの役を演じながらこう切り返します。

「何を根拠にやり直せるなんて安易なことが言えるの? ここまで墜ちてしまったらもうムリだよ……」

たいていの人はここで絶句します。けれども、さすがに「あきらめて帰る」という人はいません。しばらく考えてからキッパリ、

「お前の価値はいまでも変わらないからだよ」

と断言してくれます。

そこで私は最後の質問をします。

「いま娘さんや息子さんの中に見た、何があっても変わらない価値は、あなたの中にもありますか?」

多くの人が「そんなこと考えたこともなかった」と驚きますが、すぐに「なるほど、これか!」と納得してくれます。

このすべての人の中にある、キラキラと輝く光のようなものが、①の「絶対に不変の価値」です。

②は、私が「ブループリントの法則」と呼んでいる、この宇宙に完璧な調和をもたらしている仕組みです。詳しくはバックナンバー「令和の時代は優雅な調和へと向かう」を参照してください。

こちらも「宇宙の話ではいまひとつピンとこない」という人が大半です。そこで私は次のような提案をします。

「まず、あなたがけっしてひとりでは生きていられないことを再確認してください。そのうえで、どれだけの数の人とのつながりで、いまの仕事や生活が成り立っているかを具体的に見直してみてください」

家族、恋人、友人、仕事の同僚、世話になっている上司、自分をかわいがってくれる取引先、うちに来ないかと誘ってくれた社長、何かというと仕事を回してくれるクライアント、困ったときに救いの手を差し伸べてくれた人たち……。

一瞬のうちに、それこそ無数の「つながり」が浮かび上がってくるはずです。次に、ひとりひとりの顔をしっかりとイメージしながら、自分とその人たちのあいだに存在しているはずの、

「引力のようなもの」

を感じてみてください。

「引力」とは「互いに引き合う力」です。英語にすると「Attraction」となります。そして「Attraction」には「魅力」という意味もあります。

あなたの魅力が誰かを惹きつけ、誰かの魅力にあなたが惹きつけられます。いまイメージした人々とあなたは、「魅力」という名の引力によって、完璧な調和を奏でているように見えないでしょうか。

おそらくその様子は、この宇宙全体の調和に似ているはずです。同じビッグバンの点から生まれた私たちが、そうならないはずはありません。これが②の「最後にはかならずうまくいくこの世界の仕組み」です。

おもしろいことに、冒頭に挙げたさまざまなことを手放していない状態でも、私たちはこの2つから多大な恩恵を受けています。ただし、残念なことにフル活用はできていません。

なぜならば、私たちが自力で行おうとする「意味づけ」や計画、防御、正しさなどが、その働きを妨げてしまうからです。

今日のテーマである「手放したあと何を自分の支えにすればいいのか?」の答えは、「絶対不変の自分の価値」と「この世界の仕組み」ですが、どちらも手放しながらでなければ理解することも実感することもできません。

鶏と卵ではありませんが、もし拙著やこのブログに共感していただけたなら、「代わりの支え」など気にせずに、まずはさまざまな事柄を手放してみてください。

そこでうまくいかないと感じたら、すぐに手放すのをやめてそれまでの日常に戻ればいいだけです。トライしたからといって、失うものなど何もないことを、ぜひ忘れないでください。

Photo by Satoshi Otsuka.