拙著『グッドバイブス ご機嫌な仕事』 は、実は私たちが「この世界の姿を見誤っているんじゃないか?」という謎の問いかけから始まります。そして、私が提示した「この世界の本当の姿」は次のようなものでした。
「自分と他の人々、それを取り囲むこの世界の森羅万象はもともとひとつだった」
これが拙著の根幹を成す「ひとつ意識」です。
目で見た私たちは、身体という単位でバラバラに存在しています。けれども、五感を超えた感性で自分や他の人々、それを取り囲むこの世界全体を捉えたとき、すべては「ひとつ」と感じられないかという問いかけです。
おそらく、多くの人が疑念や戸惑いのなか、この「ひとつ意識」の話を読んだことでしょう。「頭ではわかるが、やはり実感が伴わない」という人も少なくないと思います。
そこで今日は、それを実行するだけで、自分と他の人々が「ひとつ」と感じられるはずの、ある行動を紹介したいと思います。
「ひとつ意識」をもっともシンプルな言葉で表すとしたら、
「自他の区別がない意識」
ということになります。
自分と他の人々が「身体」という単位で分離し、それぞれ孤立しているとみなす「バラバラ意識」とは、あらゆる感じ方が真逆になるとイメージしてください。
その代表的なものが「利害」です。自他の区別がある世界では、必然的に利害は「対立」することになります。
「誰かが得れば、自分が失う」
「誰かの得は、自分の損」
ほかでもない、私たちが日常でよく見かける光景です。
そこで、自分が何かを与えるときは、それに見合った見返りを求めるのが当然ということになります。私たちが「ギブアンドテイク」や「ウィンウィン」と呼ぶ、等価交換、もしくは結果として自分が少し得をするという考え方です。
これに対して、自他の区別のない「ひとつ意識」では、あらゆる利害が「一致」します。
「誰かが得れば、自分も得る」
「誰かの得は、自分の得」
もちろん利害の一致なので、「誰かの痛みは、自分の痛み」という公式も成り立ちます。拙著で書いた、東日本大震災の際に多くの人が抱いた「これはけっして他人事ではない!」という感覚も、まさに痛みが一致した証しだと私は考えます。
さらに、自分と他の人々が「ひとつ」であるこちらの世界では、与えるという行動も大きく変わります。
「誰かに与えた瞬間に、自分も与えられている」
相手に与えると同時に自分も与えられるので、見返りという概念をもつ必要はありません。「ギブアンドテイク」ではなく、ただひとつの「ギブ」がそこにあるだけです。
おそらく、このような文言を読めば読むほど、実感できるどころか謎が深まっていくことと思います。そこで、先に書いた「それを実行するだけで、自分と他の人々がひとつであることを感じられる行動」の出番です。
まずは仕事の場ではなく、家族や恋人、友人などの親しい人を相手に次のことを試してみてください。
「何かを頼まれたら、あらゆることを中断して、その瞬間に、最優先のプライオリティーで、全力を尽くして、気持ちよくそれを実行する」
たとえば、ソファーで寝そべってのんびりテレビやYouTubeを眺めていた休日に、家族や同居人から「風呂の掃除をしてほしい」と頼まれたとします。いつもなら、「いま目が離せないからあとでやるよ」と不機嫌に答える場面かもしれません。
けれども、そんな対応をしたくなる気持ちをグッと抑えながら、意を決してソファーから立ち上がり、「風呂掃除」の依頼を実行してみてください。それも、「プロに頼んだの?」と驚かれるくらい、完璧にピカピカに磨き上げるようにします。
仕事を自宅にもち帰った夕刻に、あなたのお子さんが「遊んでー」と甘えてきたら、「今日は忙しいから明日ね」と言いたい気持ちをこらえて、子どもが完全に満足するまで本気で遊んであげてください。
ポイントは、「依頼が来たら即座に」「完全なる本気モードで」「イヤな顔はいっさいせずに」の3点です。待たせる、手を抜く、不機嫌はいっさい封印しなければ意味がありません。
すべての条件をクリアできたあなたは、間違いなく自分以外の人に何かを「与えて」います。それも「ひとつ意識」の中で完璧に与えています。であるならば、その瞬間にあなたも何かを「与えられている」はずです。
なんとなく、予想するのは「ありがとう」の言葉や「相手の満足した顔」といったところでしょう。その程度のことなら、わざわざ3つの厳しい条件をクリアしなくても、ふだんの生活の中で十分に得られているはずです。
「誰かに与えた瞬間に、自分も与えられている」何かとは、風呂の掃除や子どもとの遊びを終えたあとだけではなく、全力で取り組んでいるまさにそのときにも与えられるものです。それがどんなものかは、ぜひ、自身で味わってください。
なんとなくでも手応えを感じられたら、一度や二度ではなく、それを習慣にすることを検討してください。そして、「たしかに与えられている!」と実感できたなら、仕事の現場で同じことにチャレンジしてみるのもわるくないと思います。
Photo by Satoshi Otsuka.
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