仕事自体が嫌なのか、人や環境がつらいのか

それまで「いい感じ」でやれていた仕事が、何かのきっかけで色褪せて見え、つまらない、手応えがない、自分に合っていないと感じることがあります。

そのような思いがさらに深まったとき、私たちは職場や職種を変えたいと考え始めます。けれども、そこでいったん心を静めて、次のことを確認してみてください。

「私はこの仕事自体が嫌になったのか? それともこの環境が嫌になったのか?」

私たちがよしあしを判断するときの「仕事」には、おもに3つの要素が含まれています。

① 仕事そのもの
② 職場にいる人々
③ 組織のカルチャー

①はもちろん、営業、企画、販売、制作、プログラミングなど、あなたが手がけている仕事です。職種ではなく、扱っている製品やサービスに魅力を感じていることもあるでしょう。形はどうあれ、あなたが「これこそが自分の仕事」と思っているものということです。

ひとまず、①に対してやりがいを感じなくなったかどうかの判断は保留しておきましょう。

その前に②です。こちらは一般的な会社でいえば、上司、部下、同僚です。自分の仕事が色褪せて見えたとき、何を置いてもまず、「職場にいる人々」が大きな原因になっていないかを確認してください。

冒頭に書いた「何かのきっかけ」としてよくあるのが、新しく自分の上司になった人との関係がよくない、異動になった部署の人たちとそりが合わないなどです。思い当たる節はないでしょうか。

もしかしたらあなたは、突如として悪化した人間関係を目の当たりにして、自分はとんだ災難に遭っていると感じるかもしれません。いわゆる「被害者」「犠牲者」になったような感覚です。

そんなときはぜひ、どんなときでもかならず残っているはずの冷静さを取り戻して、次の可能性を疑ってみてください。

「これは自分の意味づけによって生まれた妄想なのかもしれない。もし、被害者としての目で見てしまえば、この職場は自分を攻撃するだけの過酷なものにしか映らないだろう。それははたして真実なのだろうか?」

もし、わずか数ミリでもその可能性があるかもしれないと感じられたら、バックナンバー、「意味づけを手放せばありのままが見えてくる」「まわりにいるバッドバイブスな人への対処法」に書いたことを実践してみてください。

②を理由に職場や職種を変えても、新たな場所で同じようなことや、もっと悲惨なことが起こらない保証はどこにもありません。そもそも、あなたの天職かもしれない素晴らしい仕事を、数人の気に入らない人のために手放す必要などどこにもないのです。

あなたの大切な職場に苦手な人が現れたときは、ぜひ次のように捉えてください。

「私はいま試されている!」

何を試されているかといえば、「あなたがその状況で、自分にしわせをもたらす選択をできるか?」にほかなりません。そしてこの試練(試される練習)は、あなたがしあわせな選択をするまで続くことになります。

なぜならば、選択とは「あなたがどのようにこの世界を見るか?」の答えにほかならないからです。犠牲者として世界を見るならば、程度の差はあれ、どの職場もあなたにとっては過酷な場所であり続けるでしょう。

「意味づけの手放し方」や「バッドバイブスな人への対処法」は、あなたがしあわせな役割にたどり着くために必須の「スキル」だと思ってください。

キツいなと思う場面で一度でもしあわせな選択をすれば、この試練は終わります。その後は、もうあなたの前に苦手な人は現れなくなるでしょう。

もちろん、魔法でも人智を超えた力でもありません。あなたが嫌いな人を創り出さなくなったという、いたってシンプルな仕組みが機能し始めただけのことです。

③の組織のカルチャーは、経営陣の方針や、その影響を受けたスタッフの考え方などによって決まります。それが、いわゆるブラック企業のようなひどいものだとしたら、無理をせずに転職を考えるのがいいでしょう。

けれども、「それなりに理解はできるが、やはり自分の哲学や美学に合わない」といった程度なら、わずかに踏みとどまる余地は残っているように思います。

「この環境でグッドバイブスで仕事をしたら何が起こるだろう?」と、やはり試されているような感覚をもちながら、あと2、3か月ほど実験してみるのもわるくありません。

私は、②や③が原因で仕事に魅力を感じなくなったとき、こんなことを想像するようにしています。

「もし私が、ようやく夢をつかみとったプロ野球やプロサッカーの選手だったら、チームや監督との相性とか、球団の方針とかを理由に引退するだろうか?」

「いやいや、会社員とプロスポーツの選手とは違うよ」と思ったとしたら、その違いが何を意味するかを真摯に考えるべきだと思います。

一度でも手応えを感じた仕事は、あなたの「しあわせな役割」である可能性があります。それを手放すかどうかの重さは、どんな職種であっても完全に等しいと私は考えます。

ここまでのプロセスを経て、先に保留した①の見極め、すなわち「この仕事をまだ続けるか?」をあらためて吟味してみてください。怒りや憤りのない、本来の真っ白なあなたが何を感じるか。その答えに正直に、素直に従えばいいと思います。

Photo by Satoshi Otsuka.