私たちの不安は相手に投影されて現実となる

拙著『グッドバイブス ご機嫌な仕事』でも書いたように、私たちは自分の考えることを現実にする創造力をもっています。もちろん、それは魔法や超能力のようなものではありません。

今日は、どのような方法で私たちが自分の思考を現実化しているのかについて考えてみたいと思います。

たとえばあなたの中に、仕事が忙しくて家の掃除ができないことを不安に思う気持ちがあったとします。

「このままだとゴミ屋敷になってしまうんじゃないか?」
「いつか家族にそのことを指摘されて責められるんじゃないか?」

そんなとき、家族の誰かがさらに部屋を散らかしたとしたらどうでしょう。

おそらくあなたは、「いい加減にしてくれ!」と怒りをぶつけ、その張本人を「自分の気持ちをわかってくれないひどい人」と思うでしょう。

けれども、現実にはその「ひどい人」を創り出したのはあなた自身です。正確に言うならば、あなたの不安がそのような状況を創ってしまったということです。

そう簡単には受け入れられない話だと思います。そこで、このときあなたの中で何が起こっているかを整理してみましょう。

まず、あなたの中には掃除ができないことによる不安があります。次に、家族の誰かが部屋を散らかします。けれどもその人は、けっしてあなたを怒らせようとしてそれをしたわけではありません。

ではなぜ腹が立つのでしょうか。その理由は、このときのあなたが、

「自分の不安を相手に投影して、怒りを覚える映像を創る」

という摩訶不思議なことをしたからにほかなりません。

あなたがプロジェクションマッピングの装置で、相手がスクリーンだと思ってください。そして、散らかす様子を見た瞬間、あなたが抱える不安はそのまま相手に投影されるとイメージしてください。

その映像は現実と区別がつかないほど精巧なものです。それをマッピングされた相手は、もちろんあなたの目に「ひどい人」と映ります。こうしてあなたは、自分で創りだした映像を相手に怒りをぶつけることになるのです。

一生懸命、コストダウンの工夫をしているのに、無駄遣いをしているように思える人を見れば、「この人は私の苦労を踏みにじっている」と強い憤りを覚えることでしょう。

でもそれは、「自分のコストダウンの取り組みがうまくいかないかもしれない」というあなたの不安を相手に投影しているのかもしれません。

あるいは、体調がわるくて休んでいると、なぜかまわりの人たちが不機嫌になっているように感じることがあります。

それもまた、「自分の体調不良のせいで、みんなに迷惑をかけるんじゃないか?」という不安の投影かもしれないのです。

この「投影」こそが、冒頭に書いた「思考の現実化」の具体的な方法です。

もちろん、不安を投影する相手は人だけではありません。私たちは、出来事やモノなどあらゆる事柄を自分の見たい姿に変える力をもっています。

今日はぜひ、あなたのまわりに現れる「ムカつく人たち」に、あなた自身の不安を投影して、そのような姿にマッピングしていないかを確認してみてください。

このおかしなメカニズムさえわかってしまえば、それほど苦労せずに怒りや不機嫌さを手放せるようになるはずです。

Photo by Satoshi Otsuka.