リアルないまに学べば計画は妄想でなくなる

今日は「未来の予測」と「計画」について考えてみたいと思います。

拙著『グッドバイブス ご機嫌な仕事』やこのブログで、「未来の予測」を手放すという話を書いてきました。その理由は大きく2つあります。

ひとつは、私たちが抱える悩みの多くが、未来の望ましくない出来事を予想することから生まれるからです。

ふたつめは、四六時中、未来に意識をもっていかれることで、私たちが行動できる唯一の時間、「いまここ」にいられなくなるからです。

ただ、もしあなたが自分の職場で「未来の予測を手放す」ことにチャレンジしようとすると、大きな障害に阻まれることになるはずです。なぜならば、仕事においては「計画を立ててから行動する」やり方が常識となっているからです。

実際に、セミナーやパーソナルセッションなどでも、次のような質問がよく寄せられます。

「会議の予定を組むことや事業計画を立てることも未来の予測だとしたら、さすがに職場ではそれを手放せないと思います。この折り合いをどう考えればいいのでしょうか?」

たしかにおっしゃるとおりです。個人的には、それらの予定や計画もすべて手放したほうがいいと考えています。けれども、いくら私でも、いますぐそのような意見が受け入れられるとは思っていません。

ではどうすればいいのでしょうか。「計画」の定義を大きく変えることができれば、この問題は実にすんなりと解決します。

「未来の予測」はただの妄想です。多くの場合、それが行われるのは自宅や通勤路などの仕事から離れた場所です。

当然ですが、頭で思い悩むだけでは、物事は1ミリも前に進みません。また、頭で問題を想像したからといって、何かが修正されるわけでもありません。ただ、あなたの中に「恐れや不安」が沸き上がるだけです。

このことを踏まえたうえで、「計画」の捉え方を次のように変えてみます。

「計画とは、こうすればうまくいくであろう仮説」

「未来の予測」は妄想に過ぎませんが、そうなると信じる人にとっては変えることのできない現実です。

これに対して、上のように定義し直した「計画」は、過去の経験に基づいてはじき出された単なる仮説であって、けっして「かならずそのとおりになる!」というエスパーの予言のようなものでないということです。

だとすれば、「計画」を実行するうえでもっとも重視されるべきは、

「いま現実として何が起こっているか?」

ということになります。

もし、予定よりも進捗がうしろに倒れたとすれば、それは実行する側に問題があったのではなく、

「計画のほうが間違っていた」

とみなすべきなのです。「計画は仮説に過ぎない」と捉えればこのような判断が可能になります。

つまり、「計画」に沿って物事を進める際に忘れてならないのは、

「いまここで起こっているリアルな出来事に学びながら、仮説としての計画を修正し続ける」

ことだと私は考えます。

真面目な人であればあるほど、「それでは生ぬるい! いったん立てた計画を変えてしまっては何の意味もない!」と言いたくなるかもしれません。けれども、想像が現実に勝ると考える根拠はどこにあるのでしょうか。

たしかに、メンバーの怠慢が遅れの原因ということもあるでしょう。けれども、それもまたあなたのチームの現実です。問題はそのような現状を考慮しなかった計画にあったと考えるほうが、修正点はより明確になります。

「計画」が主で、実行する私たちが従なのではなく、あくまでリアルになされた行動こそが主であるべきなのです。

このように考えるならば、「計画」もまたリアルタイムに修正され続けるという意味で、「いまここ」で行うことのひとつに変わります。

そして、そのような「計画」ならば、私たちに根拠のない圧迫感を与えたり、「恐れや不安」を生み出したりすることもなくなるはずです。

Photo by Satoshi Otsuka.