怒りや不機嫌さを何らかの目的で行使しない

基本的に、私たちは自分にメリットのないことを選択することはありません。

たとえば、誰もが怒ったり不機嫌になったりすることを望んでいないように見えます。でも、私たちはそのような願望とはうらはらに、日々、怒ったり不機嫌になったりします。

「なぜ、あなたは望んでいない状態になるのか?」と聞かれたら、多くの人はこう答えるでしょう。

「自分は好きで怒ったり不機嫌になったりしているわけではない。周りの人々が自分を不愉快な気分にするから仕方なくそうなるんだ!」

まっとうな理由のように聞こえますが、残念ながらこれは大きな誤解です。冒頭に書いたように、私たちは何のメリットもないことを選ぶはずがないのです。

つまり、そこに明らかなメリットがあるから、私たちは本当は望んでいない怒りや不機嫌さをもつことを自ら選択しているということです。

では、怒りや不機嫌さをもつことのメリットとは何でしょうか?

まずは、「自分を不愉快な気分にさせた相手にその事実を知らしめたい」という思いを果たせることです。「ひどいことを言われた→ムッとする→相手に自分が傷ついていることをアピールできる」という図式です。

さらに、不機嫌になることは、そんな自分の様子を見せつけて相手にも同じように嫌な思いを抱かせるという「復讐」の手段としても使えます。

ほかにも、「周囲の人に同情してもらえる」「これ以上、ひどい仕打ちをされないための防御になる」「理不尽な扱いに対する抗議の印になる」など、怒りや不機嫌さをもつことのメリットはたくさんあります。

ぜひ、直近で不機嫌になりそうな機会があったら、心の奥底でこのような目的を感じていないかを確認してみてください。おそらく、そこには「不機嫌になることで○○してやろう」と考えているあなたがいるはずです。

そのことが判明したら、こんな質問を自分に投げかけてみてください。

自分が不機嫌でいることで……
「ストレスはキレイさっぱりなくなっているか?」
「敵視している会社や部署や上司は、それによっていい方向に変わっているか?」
「同情してくれる同僚は、心からそんな自分の様子を快く感じているか?」
「本当に不快な出来事や発言から自分を守れているか?」

これまであなたが信じていた、怒りや不機嫌さをもつことのメリットを疑ってみるということです。

もし、「思ったほどの効果はないのかもしれない……」と感じたら、キッパリとこう宣言してください。

「私は仕事において、いっさいの怒りや不機嫌さを手放す!」

最初は、自分を攻撃する人たちを無条件で許してしまうような、自分だけが損をするような気がするかもしれません。けれども事実は真逆です。

ただの幻想でしかないメリットを行使するのをやめ、本当は絶対にもちたくないはずの怒りや不機嫌さを手放せば、あなたはいつでも「いい感じ」でいられ、どこに行くにも「グッドバイブス」を携えられるようになるのです。

Photo by Satoshi Otsuka.