拙著「グッドバイブス ご機嫌な仕事」に、私のお気に入りのこんなエピソードが登場します。
驚くほど美味しいお茶を煎れてくれる知人女性の話です。私が「どうしてそんなに美味しく煎れられるのか?」と尋ねたところ、こんな答えが返ってきました。
「子どものころから母親に、お茶をいれるときは飲んでくれる人の顔をひとりずつ思い浮かべながら、最大の愛情を一緒に注ぎなさいと教えられてきました。いつもそれをやっているだけです」
この、自分が創る対象に自分自身の思いを拡張していく創り方を、私は「広がる創造」と呼んでいます。
反対に、私たちがふだん行っている、自分から創ったものが離れていくように感じる創造を「分離する創造」と呼びます。
あなたが行った仕事なのに、そのできあがりを「あまり見たくない」と感じることはないでしょうか。
ブロガーなら自分が書いた記事、音楽家なら自分の演奏、ウェブデザイナーなら自分の手がけたウェブサイト、それらを「できれば見たくない、聴きたくない」と思うような仕事は、創り手から完全に切り離されています。これが「分離する創造」です。
反対に、先の女性のように自分の思いを込めた仕事は、何度でも振り返って味わいたいし、場合によっては自分の分身、もしくは我が子のように愛おしく感じることもあります。こちらが「広がる創造」です。
そして、仕事に「グッドバイブス」を宿らせる具体的な方法が、「広がる創造」を行うように心がけることです。
一粒の植物の種をイメージしてください。そこから根が生え、芽が出て茎や葉に育ち、花が咲いて実が成ります。この「根、芽、茎、葉、花、実」のすべてを「種が自らを拡張しながら創造したもの」と捉えてみます。
この「種」があなた自身です。そして、「根、芽、茎、葉、花、実」にあたるのが、あなたが仕事によって創り出すものです。
種を初めとする自然界の創造に学ぶといってもいいでしょう。
もちろん、私たちは種のように自分の身体を拡張することなどできません。けれども、「自分の思い」ならば自分が創ったものに広げていくことはできます。
そのようにして、あなたの思いが込められた、すなわちあなたの思いが拡張された仕事には、間違いなく「グッドバイブス」が宿っているということです。
Photo by Satoshi Otsuka.
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