イリュージョンに自分を惑わす力を与えない

私たちはたぶん、「ずっとしあわせでいたい!」と願っています。もちろんそれは、あなたにも私にも、誰にでも可能なことです。

ただし、揺るぎなく永続するしあわせは、成功や権力、評価、地位、名声、経済力、家族など、「自分の外にある何か」を得ることだけでは実現しません。

なぜならば、どれだけ望むものを手に入れたとしても、心の中にほんのわずかでも心配や懸念が芽生えてしまえば、私たちのしあわせはその瞬間に途切れてしまうからです。

何をして、何を観て、何を聴いて、何を食べて、どんな服を着て、誰と一緒にいるのが楽しいかは人によって千差万別です。けれども、そこで「ああ、しあわせだ!」と感じるための「内側の土台」は、すべての人に共通すると私は考えます。

そしてその土台とは、ほかでもない、拙著『グッドバイブス ご機嫌な仕事』やこのブログで繰り返し書いてきた、いっさいの「恐れや不安」がない、

「平安な心」

なのです。

つまり、「ずっとしあわせでいたい!」と望むならば、「自分の外にある何か」を得ようとするのと同じか、ときにはそれ以上の熱意をもって、「平安な心」でいる努力をするしかないということです。

このことを踏まえたうえで、今日は一昨日に書いた「恐れや不安」への対処法を、もう少し掘り下げてみようと思います。

私が「フルコース」と呼ぶ「恐れや不安」のプロセスは次のとおりです。

① 望ましくないと思える出来事に遭遇する。
② 条件反射のように「ザワつき」を感じる。
③「この危機的な状況から身を守りたい!」と考える。
④「この出来事が自分にどのような影響を与えるか?」と自問する。
⑤「④の答えは誰にもわからない!」という事実に気づき「不安」になる。
⑥ それでは身を守れないので、「わかっている!」という状態を欲する。
⑦ 頭の中で未来を予測し、無理やり④の答えを創造する。
⑧ ⑦で創り出した「イリュージョン」が現実であるかのように感じる。
⑨ ⑧の映像を目にして、猛烈な「恐怖」が押し寄せてくる。

前話ではこの流れのうち、「どこが最大の分岐点か?」を探りました。

もっとも注意すべきは④と⑤の部分でした。ここで「本当のことはわからない」という事実を受け入れ、「先行きが読めない」現実を赦せばいいのです。

これで、「恐れや不安」をもたらす⑥以降の行動を変えられるようになります。

ただ、ずいぶんと長いこと、「わかっている!」状態を欲するのがあたりまえと思い込んできた私たちが、一朝一夕にその願望を捨てられるはずがありません。

少しでも油断したとたん、あなたの頭はすぐに「この先、自分はどうなる?」と、よくない未来の予測をし始めるでしょう。

しかもやっかいなことに、思考はシングルタスクです。何かを考えてしまうともう、「いま自分は考えている」ことに無自覚になってしまいます。

残念ながら、あなたがその事実に気づくのは、⑧の「自分が遭遇するであろう悲惨な未来の映像」を目撃したあとなのです。

文章にすると、それぞれのプロセスがゆっくり動いていくように見えますが、実際には⑦から⑨までの時間は数秒ほどしかありません。

すぐに⑨の恐怖が押し寄せ、怒りや憤りなどの負の感情を抱くか、膨大なエネルギーを消耗してぐったりするかして、「平安な心」は失われてしまうでしょう。

でも安心してください。実はここにもうひとつ、最後の抑止ポイントがあります。

もしあなたが、④と⑤のステップで「先行きが読めない現実を赦す」に失敗して、「この先、私はどうなる?」と恐い未来について考え始めてしまったときは、

「自分が創り出すイリュージョンに力を与えない!」

と決意してください。

具体的には、⑦で思考が動き出し、⑧の「自分が遭遇するであろう悲惨な未来の映像」が見えたときに、

「フン、また私はこんなくだらないB級のホラー映画をひとつ撮ってしまった」

と自分の創ったイリュージョンを鼻で笑うのです。

ここでの最大のポイントは、

「自分がこの先どうなるかについて考えるのは仕方ない」

とあきらめてしまうところにあります。

思考に逆らうのをやめるといってもいいでしょう。「やりたいなら、好きなだけよくない未来を予想すればいいさ」と自分に言ってやってください。

いっそのこと、それまで「考えちゃダメだ!」と踏みとどまっていた自分も、

「よし! どれだけ悲惨な目に遭うか、飛びきり酷い映像を創ってみようぜ!」

と、あえてイリュージョンの制作に荷担するのもひとつの手です。

完全に納得していないとしても、あなたはすでに前話のメソッド「本当のことは何もわからない」を読んでしまっています。

そして「どんなときでも、先行きは見えない」という現実も、このブログを読むまでもなく、ずっと以前から完璧に知っていたはずです。

そんな自分として、いま頭で描き出した映像を、思いっきり冷めた目で鑑賞してみるのです。

たとえばある友人から、「YouTubeに本物のUFO動画が上がってたんだよ!」と、バリバリのCG映像を見せられたときの感じをイメージするのがいいでしょう。

あなたは間違いなく、微かに笑みを浮かべてこう言います。

「よくできているけど、これが本物ならいますぐ火星にでも避難しないとw」

これが「イリュージョンに力を与えない!」ということです。

たとえ⑦と⑧が止められなかったとしても、

「現実と幻想の境目を見極める選別眼」

を失わなければいいのです。

これさえできれば、どれだけよくない空想や妄想をしたとしても、それをあかたも現実であるかのように捉えて「恐れや不安」を抱くことはなくなります。

それだけでなく、誰かから恐い情報を聞いたときも、メディアやSNSで不安を煽るネタを目撃したときも、それらを無条件で「自分を苦しめる現実」とみなすことはなくなるはずです。

Photo by Satoshi Otsuka.


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