1月28日以来、約40日ぶりの投稿です。みなさん、お元気ですか!
この間、新型コロナウイルスの世界的な感染という出来事が起こりました。同時に、なかなか出口が見えないことへの懸念や心配も広がっているように思います。
そこで、今日はあらためて、私たちから多くのエネルギーを奪い去り、負の感情を芽生えさせ、最後には「おかしな行動」へと駆り立てる、「恐れや不安」への対処法について書いてみようと思います。
まずはメカニズムからおさらいしておきましょう。多くの場合、次のようなプロセスを経て、私たちは「恐れや不安」を抱くことになります。
① 望ましくないと思える出来事に遭遇する。
② 条件反射のように「ザワつき」を感じる。
③「この危機的な状況から身を守りたい!」と考える。
④「この出来事が自分にどのような影響を与えるか?」と自問する。
⑤「④の答えは誰にもわからない!」という事実に気づき「不安」になる。
⑥ それでは身を守れないので、「わかっている!」という状態を欲する。
⑦ 頭の中で未来を予測し、無理やり④の答えを創造する。
⑧ ⑦で創り出した「イリュージョン」が現実であるかのように感じる。
⑨ ⑧の映像を目にして、猛烈な「恐怖」が押し寄せてくる。
あとは、怒りや憤りなどの負の感情が生まれ、誰かを攻撃するなどの「おかしな行動」をしたくなるという、お決まりの結果が待っているだけです。
この一連の「恐れや不安」フルコースから逃れるためには、
「どこが最大の分岐点か?」
をしっかりと認識しておくことが大切です。
「自分の意志によって、選択や行動を変えられるのはどこか?」
を知るといってもいいでしょう。
①は現実の出来事なので回避することはできません。②で起こる心拍数や血圧の上昇も自分で制御することはまず不可能です。
その意味では、③の「身を守りたい!」という思い、④の「え、これから自分はどうなるの?」という自問も、仕方ないことと捉えておくほうがいいでしょう。
問題はここから先です。ぜひ、⑤と⑥の部分に注目してください。このときあなたは、次のような強い思いに囚われているはずです。
「この先に何が起こるかわからない状態だけは、絶対に許せない!」
ところが、どれだけ許せないと憤ったところで、「何が起こるかわからない」という事実は変えられません。
残念ながら、自分の経験から過去のパターンを引っ張り出しても、専門家のアドバイスを騒動員しても、数値やデータを詳細に分析したとしても、私たちが、
「未来に何が起こるか?」
「ある出来事が自分にどのような影響をもたらすか?」
について完璧に知ることなどできないのです。
ところが不思議なことに、これ以上ないほど明らかな事実を、私たちは頑として受け入れようとしません。
なぜならば、多くの人が、
「この先に何が起こるかわからない状態ほど、恐いものはない!」
と思い込んでいるからです。
ぜひここで、あなたの心の中を整理してみてください。現実と自分の願望を、ありのままに比較してみるのです。
現実=「本当のことはわからない」
願望=「何が起こるかをすべて把握しておきたい!」
①の「望ましくない出来事」に遭遇したときには、いつでも自分の中で上の2つが葛藤するということです。
このメカニズムに気づいたあなたはいま、「恐れや不安」を抱いて苦悩するか、グッドバイブスでいるかの「最大の分岐点」にいます。
そして、どんなときでも選択肢はAとBの2つしかありません。
A:現実を受け入れる!
B:願望を満たすために、勝手なイリュージョンを創り出す!
Bを選ぶなら、先に書いた「恐れや不安」のフルコースをたどるしかありません。
今回の騒動ならば、マスクやティッシュがなくなると聞いて、使い切れないほど買い占める、どれだけ手を洗っても安心できない、パリの日本食レストランに「コロナウイルス消え失せろ」と落書きするなどの、「おかしな行動」へと導かれます。
そうではなく、もう一方のAを選びたいなら、④で「この出来事が自分にどのような影響を与えるか?」と自問したときに、揺るぎない確信をもってこう答えればいいのです。
「本当のことは何もわからない!」
この瞬間に、あなたは現実を受け入れたことになります。
「え? 何もわからなければ、不安も消えないじゃないか!」と思うかもしれません。でも安心してください。⑤以降の行動を大きく変えれば、「恐れや不安」→「負の感情」→「おかしな行動」のルートをたどらずにすみます。
恐怖のあまり、想像や妄想によって無理やり「わかっている状態」を創り出す代わりに、
「いま目の前で起こっている現実を、穴が空くほど観察する!」
という選択をすればいいのです。
いったん自分を「何も知らない」白紙の状態にして、このブログで書いてきた「Look!」(凝視)と「Listen!」(傾聴)を、目の前の出来事に対して実践するということです。
どんなときでも現実は、私たちが頭で創り出す負のイリュージョンほど悲惨ではありません。そこにはかならず「最後はなんとかなる」出口が用意されています。
そうでなければ、私たちは一日たりとも生きていられないはずです。「恐れや不安」を手放したあなたは、冷静な判断力をもってその事実に気づくでしょう。
あとは、放っておいても現実が「いま何をすべきか?」を教えてくれます。事態が収束するまで、凝視、傾聴した結果に従って行動していれば、想像するほど危険な目に遭うことはないのです。
そしてもうひとつ、今回の出来事には、私たちにとって学ぶべき大きなポイントが隠されているように思います。
ぜひ、
「望ましくないと思える出来事には、2つの種類がある」
という点に注目してください。
ひとつは、それを引き起こした原因が、明らかにあなたにある場合です。「仕事でミスをした」「自分の心ないひと言で他の人を傷つけた」「着手が遅れて期限を守れなかった」などがこれにあたります。
もちろん、少しでも油断すればここでも、「この先に何が起こるかわからない状態だけは、絶対に許せない!」という思いが襲ってきます。
でも、このときの「許せない」対象は、あくまで何かをやらかしてしまったあなた自身です。怒りや憤りをぶつける相手も自分しかいません。
だからといって、自分自身を責めてしまえば、あなたはさらに辛く、苦しい状況に追い込まれてしまいます。
この状況なら、先の選択肢から現実を受け入れて楽になるAのほうを、それほど無理なく選べるはずです。
ところが、ふたつめのケース、
「この望ましくない出来事が起きた原因や責任は、いっさい自分にはない!」
と思ってしまう場合には、かなり厄介なことが起こります。
今回の新型ウイルスがその代表のような例です。ほかにも自然災害や、「会社で突然、リストラされた」「結婚相手が浮気をした」「誰かに理不尽な扱いを受けた」などもこの分類に入れていいでしょう。
こちらのあなたは自分自身を清廉潔白と見ています。「この先に何が起こるかわからない状態だけは、絶対に許せない!」の矛先も自分には向けられません。
憎むべき相手はあくまで地球や社会や政治、もしくは信じられない行動をとった自分以外の人たちだからです。
ぜひ、最初の「自分が原因で起きた望ましくない出来事」と比べて何が変わってくるかを、リアルにイメージしてみてください。
こちらのほうが、
「自分には何の非もないのに、これほど悲惨なめに遭い、そのうえこの先に何が起こるかわからないなんて、あまりに酷すぎるじゃないか!」
という、「先行きが読めないこと」への不安と、そのような過酷な現実に向き合わなければならない憤りが、はるかに増強されていないでしょうか。
この時点で、私たちはもう十分に戦闘モード、攻撃モードに入ってしまっています。このような状態から「本当のことは何もわからない!」と認め、グッドバイブスのメソッドを淡々と進めるなど、どう考えても無理な相談なのです。
ここでもっとも重要なのが、拙著『グッドバイブス ご機嫌な仕事』にも登場する、
「赦す」
という選択です。
それは、他人の言動を「罪」とみなして「罰」を与えようとするのではなく、ただの「間違い」と捉えて「修正」だけを考えることを意味します。
「望ましくない出来事」にもこの発想はそのまま応用できます。
自分に原因や責任があろうとなかろうと、あなたが遭遇してしまった出来事を変更することはできません。すべては、私たちの手の届かない「過去」に起こったものだからです。
であるならば、出来事にも「罪」のラベルを貼らずに、怒りや憤りという名の「罰」も与えずに、
「これからどう修正するか?」
だけにフォーカスするのが、もっともしあわせな選択ではないでしょうか。
そもそも、「本当は何もわからない」私たちが、ある出来事の原因や責任がどこに、誰にあるかを決めようとすること自体、傲慢な試みなのかもしれません。
もしそれは不毛なことだと感じたら、以前にもこのブログで書いた魔法の言葉、
「ほお、そう来たか!」
で受けておくのが得策だと私は考えます。
最後に、偶然にもこの時期に『グッドバイブス 安心力で生きる』という新刊を出すことができました。心理学ジャーナリストの佐々木正悟さんとの共著です。
グッドバイブス流の「いっさいの計画を手放すやり方」で書かれた本なので、いつ発売できるかが判明したのも、3月7日の発売日の10日ほど前でした(笑)。
でも、
お金、評価、目標、健康、残り少ない時間?
人生100年時代を「不安ゼロ」にする12の技術
というサブタイトルを冠した本書が、このタイミングで完成したことに、「なんとかなる現実」に導かれたような必然を感じています。
『グッドバイブス ご機嫌な仕事』を繰り返し熟読し、ポッドキャスト番組「グッドモーニングバイブス」を100回以上も放送する佐々木さんも、私の中から「安心力」という大切なキーワードを引き出してくれました。
だからこそ、多くの人がいままさに抱える「不安」を和らげる一助になると確信しています。リモートワークの合間に、ぜひご一読ください!
Photo by Satoshi Otsuka.
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