心から苦手な人、大嫌いな人をどう赦すか?

「平安な心」をもってグッドバイブスでいられるようになれば、次第に「自分の敵」と感じるような人物は少なくなっていきます。その理由は、「そういう人がいなくなった」からではなく、あなたがほとんどの人を敵視しなくなったからです。

拙著『グッドバイブス ご機嫌な仕事』やこのブログの読者の中には、「たしかに最近はそうかもしれない」と、手応えを感じている人も少なくないでしょう。

ところが、そうして自分の周囲に敵がいなくなればなるほど、あるやっかいな現象が起こり始めます。

それは、

「心の底から苦手と思う人」
「どうしても好きになれない人」
「どれだけがんばってもグッドバイブスでいられなくなる人」

の存在に、以前よりも悩まされるような気がするというものです。

その人が現れるだけで、しあわせな空間が一気に灰色に変わったように思え、気がつくとグッドバイブスもどこかに吹き飛んでしまう。SNSのタイムラインでたまたまその人の投稿を目にしただけで、深い闇の中に落ちていくような気分になる。

そんな難敵が、あなたの中に何人か残っていないでしょうか。私はこれをグッドバイブスの「ラスボス」と呼んでいます(笑)。

もちろん、いまあなたが「ラスボス」に直面しているのは、けっしてわるいことではありません。あらゆる人を敵視しない努力をしたからこそ、最後に苦手な分野の数人が残っただけのことです。

そう、今日のテーマはこの「ラスボス」の攻略法です。

まず、自分の記憶をさかのぼって過去に行きましょう。もしかしたらそれは、あなたによって固く施錠された「絶対に開けたくない扉」かもしれません。

心に強い負担を感じるようなら、このトライはもう少し先延ばしにしてください。しばらくのあいだ経験値を増やしながら、「よし、いけるかも!」と思えるときまで現状維持のままにしておいてかまいません。

もし、それほど抵抗なく実行できそうなら、次の時間まで戻ってそこで何が起こったかをできるだけ鮮明に思い出します。

「心の底から苦手だと思うその人が、あなたをひどく傷つけた瞬間」

すぐに悲惨な映像が頭に浮かぶはずです。記憶の中の相手は、自分とは異質の生き物のように見えないでしょうか。それはまるで、モンスターやエイリアンのような感じです。

ここで記憶の修正が必要になります。なぜならば、あなたはこのとき「コイツは理解不能なモンスターだ」と「意味づけ」をしてしまったからです。

景色をありのままに戻しておきましょう。

「彼や彼女も、私とまったく同じ人間だった」

現実どおりにこう言い換えるだけで、攻略の可能性は大きく広がります。

あなたはいま、相手がけっして理解不能なモンスターではなく、その心に共感できるひとりの人間だと認めました。それを前提に、次のことを探ってください。

「自分にひどい仕打ちをしたとき、この人は何らかの恐怖を抱いていたか否か?」

いま記憶を修正したとおり、相手が同じ人間だとしたら、答えはあなたの心の中にあります。

この人ほどではないにしても、似たようなひどいことを誰かにしてしまった経験があなたにもないでしょうか。赤の他人だけでなく、親兄弟、恋人、パートナーなどの「甘えられる人」に対しての行動も含めて思い出してください。

あなたが誰かにひどいことをしたとき、そこに何らかの「恐怖」がなかったでしょうか。何かを失うかもしれない、何かを見たくない、自分の大切な何かが壊れるかもしれない、自分が責められるかもしれない、そんな恐怖です。

あなたの経験と照らし合わせて、「うん、自分にひどい仕打ちをしたこの人の中にもあったかもしれないね」と思えるだけで十分です。相手が抱いていたであろう恐怖の中身を細かく想像してもあまり意味がありません。

これであなたは、「自分にひどい仕打ちをした人」と、そのような言動を生じさせた原因を共有したことになります。

「なるほど、あの人は恐かったのか」と思えたら攻略の半分は終わっています。

あなたの中に残っている障壁はあとひとつ。次の思いが解消されることです。

「だからといって、あれだけひどいことをしていいのか?」

そう「程度」の問題なのです。程度とは相対的なものです。この場合、あなたの中に次のような確固たる「正しさ」があるはずです。

「どれだけ恐怖を感じていたとしても、自分ならもう少し自制する」

この「正しさ」と比較したとき、自分が受けた「ひどい仕打ち」は明らかに限度を超えた、一発退場のレッドカードだとあなたは相手を裁いているのです。

あと少しのところまで来ています。復讐心を手放して冷静に考えてみてください。

恐怖があなたにも「ひどい仕打ちを」行わせることはすでに判明しています。だからこそ、あなたの「正しさ」も「完全に自制する」とは言っていません。

だとしたら、ここでいう「あれだけ」や「もう少し」といった相対的な程度に、あなたが強くこだわり続ける意味が本当にあるのでしょうか。

もしいま、アニメのイケメンキャラのように、目を閉じてややうつむき加減に「フッ」と微笑を漏らながら、「もういいか」と言えたとしたら、あなたは、

「心の底から苦手な人や、大嫌いな人を赦した」

に違いありません。

同時に、過去の記憶の中で創造した悪夢のようなストーリーも、いくらかは水に流されているでしょう。その状態の自分のまま、もう一度、彼や彼女に向き合ってみてください。

「でも、これだけは言っておきたい」と思うことがあれば、あなたが最適と思うタイミングで、恐怖ではなく今度は愛をもってストレートにそれを伝えてください。

ここであなたの「ラスボス」攻略は完結するはずです。

正直に告白すると、『グッドバイブス ご機嫌な仕事』の第9章を書き終えるまでは、私にも「ラスボス」が数人いました。

けれども、ラストの「赦す」の話を出版する前には、なんとしても攻略を完了させなくてはと思い、勇気を振り絞って全員に今話のメソッドを実行しました。

不思議なことに、一度も失敗することはありませんでした。現在は、すべての「ラスボス」と、とてもいい関係を築けています。そればかりか、彼らがいてくれたおかげでここまで来られたと、心から感謝しているくらいです。

私たちの人生には、さまざまな役割をもったキャストが登場します。その中に自分に不幸だけをもたらす人物などひとりもいません。私にとっての「ラスボス」攻略は、そのことを学ぶ最高の機会であったように思います。