情報ではなく「直感」で決めるトレーニング

今日は、明後日からの大型連休でぜひ試してほしい、あるトレーニングを紹介しようと思います。

私たちはふだん、何かを行ったり選んだりする際には、それが正しいことを裏付けてくれる理由や根拠が必要だと考えています。そして多くの場合、その具体的な中身は、

「効率がいい、無駄がない、損をしない」

といったメリットを感じられることです。

都合のいいことに、いま、このような願望を完璧に満たしてくれる道具を誰もが手にしています。スマホとインターネットとウェブです。見知らぬ街で食事をしたいと思ったら、すかさずスマホを取り出し、グルメサイトなどで人気の店を探して最短距離で直行します。

このやり方なら、大ハズレの店に入ることもなければ、ウロウロと歩き回ったり、遠回りをしたりする必要もありません。まさに、「効率がいい、無駄がない、損をしない」の三拍子揃ったスマートなり方というわけです。

ただ、これによって私たちは、

「よく調べてから動く」

という暗黙のルールから逃れられなくなっているのも事実です。「それの何がわるいの?」と思うかもしれませんが、裏を返せば、

「情報が足りないと感じている状態では動けない」
「情報がなくては決断できない」

ということでもあります。さらに深読みするならば、いつのまにか私たちは、

「自分の直感よりも、情報や他人の評価を信じる」

ようになっている可能性もあるのです。

ちなみに、私は直感を次のように定義しています。

「直感とは恐れや不安のない状態で、私たちが本来の能力を発揮して出した答え」

それは、「効率がいい、無駄がない、損をしない」などの誰もが予想しがちなメリットを軽く凌駕して、私たちを最良の場所へ導いてくれるもっとも優れたガイドなのです。

前置きが長くなりましたが、ゴールデンウィークに試してほしいのは、この直感に対する信頼を取り戻すための練習、すなわち「情報ではなく直感で決めるトレーニング」です。

まずは、あなたがひとりで動ける自由な時間を確保してください。もし、パートナーやご主人や奥さんがこの練習に理解を示してくれそうなら、趣旨を説明したうえで一緒にトライするのもいいでしょう。

次に、関東なら吉祥寺、上野アメ横、戸越銀座など、大きな商店街をひとつ選びます。できれば、これまで一度も訪れたことがない場所がベストです。

行き先が決まったら、正午あたりには最寄り駅に到着するようにして、次のゴールを設定します。

「これからこの商店街で最高のランチをゲットする!」

ただし、スマホはもちろん、地図やガイドブックの類いを参照するのは厳禁です。もちろん、前日の下調べもいっさい禁止です。

商店街の入り口に立ったところからゲーム開始です! 静かに深呼吸して、焦ったり急いだりする気持ちをすべて手放してください。目標は最高のランチですが、どんなジャンルの何を食べたいかなどのイメージもあえてもたないようにします。

左右にあるすべてのお店をじっくりと見渡しながら、自分にこう問いかけます。

「さて、オマエはどちらに進みたい?」

あとは、ただあなたの直感に素直に従いながら、「かならず最高のランチがゲットできる!」と信じてひたすら歩き続けてください。

途中で気になる看板があったら、それを頼りに次に進む方向を決めてもいいでしょう。匂いや音楽なども重要なシグナルです。とにかく、気になる何かを見落とさないで、それに「導かれる」ような感覚で街をさまよってみてください。

途中で空腹に耐えられなくなっても、絶対に妥協は禁物です。結果はどうあれ、あなたが、

「これこそが、今日、自分がたどり着くはずだった店に違いない!」

と確信できる場所を見つけるまでは入店しないと決意します。

なんといってもゴールデンウィークのランチタイムです。どの店もかなり混雑しているでしょう。そこで列に並ぶのか、それとも次を探すのかもあなたの直感に聞いてください。

クライマックスは、あなたが「これだ!」と決めたお店で出された料理を口にする瞬間です。はたしてそれは最高のランチか、それとも?

もし、この「情報ではなく直感で決めるトレーニング」を楽しいと感じたら、規模を大きくして、同じ方法でひとり旅をしてみるのもありです。さらにそこで手応えを感じられたら、思い切って休み明けの職場で試してみるのもいいでしょう。

ただし、くれぐれも、無断で家族やパートナーを連れ回すことのないようにご注意ください(笑)。

Photo by Satoshi Otsuka.