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いっさいの用意を手放し、準備を万端にする

今日は「用意」と「準備」の違いについて考えみたいと思います。一見、ほぼ同じことを表す言葉に見えますが、それぞれの意味は大きく異なります。

まず、例外はあるものの、「用意」は一般に具体的なものを対象にし、「準備」はおもに抽象的な概念を対象にするという違いがあります。

たとえば、「何かのためにお金を用意する」は普通の言い回しですが、これを「何かのためにお金を準備する」と言い換えるとやや違和感が出てきます。

同じように、「心の準備をする」という表現を、「心の用意をする」と言い換えることはあまりありません。

私なりの解釈ですが、「用意」には、

「未来に起こる何かを細部まで予想して、抜かりないように具体的な備えをする」

というニュアンスがあるように思います。

一方の「準備」とは、

「未来に起こるどんな状況にも対応できるように、自分を整えておく」

行為を指すと私は捉えています。

最大の違いは、「用意」は「未来に起こる何か」によって行うことが異なるのに対して、「準備」は「それが何であってもやることは変わらない」という点です。

「用意」には緻密な「予測」が不可欠で、「準備」にはいっさいの「予測」が不要といってもいいでしょう。

この意味で、イチロー選手がバッターボックスに入るまでに行う、あの有名な「ルーチン」も「用意」ではなく、「準備」だということになります。なぜならば、相手投手が誰であろうと、何回の攻撃であろうと、点差が何点だろうと、イチロー選手の行う内容は同じだからです。

ではここで、あなたがタフな交渉に挑むときの様子をイメージしてみてください。ただでさえ話しにくい相手と、ややこしい話をしなければならない、そんな場面を想像するのがいいでしょう。

おそらく、あなたは彼と会う数時間前、あるいは数日前から「何を話すか?」の「用意」をしようとするはずです。

場合によっては、劇作家にでもなったように、「まず自分からこう切り出す」「相手はこう返す」「それに対してこう切り返す」などのシナリオを、こと細かに頭の中で作り上げることもあります。

不思議なことに、安心をもたらしてくれるはずの「用意」をしているうちに、得体のしれない不安や、極度の緊張に襲われたことはないでしょうか。

そして、そんな不快な時間を過ごしたあと、いざ本人の前に立ってみると……。

多くの場合、私たちの予測は大きく外れ、かなり早い段階で「用意」しておいたシナリオは崩壊します。「用意」という支えを失ったあなたは困惑するばかり。もちろん、タフな交渉はあなたの望まないところに着地して終了です。

残念ながら「用意」、すなわち「未来の予測」には私たちが期待するほどの効力はありません。そんなことに時間と労力を費やすくらいなら、徹底して「準備」をすべきなのです。

いざというときに頭が冴えわたるように睡眠時間を十分にとっておく。エネルギーが切れないようにしっかりと食事をしておく。「恐れや不安」を手放して揺れない心を保っておく。

もちろん、その「いざいというとき」が何であっても、やることは変わりません。

「いっさいの用意を手放し、準備を万端にしておく」

これが、困難に思える状況を乗り切る最大の秘訣です。

そうそう、このメソッドは先のタフな交渉のほかに、面接のようなシチュエーションでも力を発揮してくれるはずです。

Photo by Satoshi Otsuka.

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