自分の考えていることを見張っていればすぐにわかりますが、私たちは四六時中、先のことを気にしています。「未来の予測」に多くの時間を費やしていると言ってもいいでしょう。
ただ、私たちは手ぶらの状態で「未来の予測」をすることはできません。未来を予測するためには、その読みが正しいことを証明してくれる、ある「根拠」が必要になります。
そして、「未来の予測」をするための「根拠」として、私たちが絶大な信頼を寄せているのが「過去のデータ」なのです。
「過去のデータ」にはさまざまな種類があります。自分自身の経験、本やメディアから得た情報、経験者からの伝聞、何らかの教育によって得た知識、統計データなどなど……。
そのような頼りになる「根拠」を元に私たちはこう考えます。
「過去にこうだったのだから、未来もそれに近いことが起こるに違いない!」
ぜひ、あなたの頭の中でこの行為を図に変換してみてください。右に「過去のデータ」があります。そこから左に矢印を引っ張って「未来の予測」につなぎます。
過去と未来が一直線に結ばれる単純な図ができあがるはずです。
「過去のデータ」は完全に固定されています。すでに起こってしまったことは変えることができないからです。これによって、固定された「過去のデータ」から生まれる「未来の予測」も実は、同じようなパターンを繰り返すことになるのです。
そうして出された予測を元に私たちが行った行動もまた、「過去のデータ」として記録されていきます。
私はこれを、
「過去と未来の無限ループ」
と呼んでいます。
このループの最大の特徴は、「過去と未来」という実際には存在しない幻想の時間だけで成り立っていること、そして、私たちが唯一、何かを行える「いまここ」が存在しないことにあります。
もし、あなたの中に、「これは苦手だ」「これは自分にできっこない」「あの人と話すのは恐い」「あの人に頼んでもまた失敗するだけだ」などのイヤな思いがあったら、ぜひこの「過去と未来の無限ループ」に陥っていないかを確認してみてください。
そこから抜け出す方法はいたって簡単です。いまはもう存在していない「過去」のデータを捨て、それによって不可能になる「未来」の予測を手放し、「いまここ」でそのイヤな思いを変えるための行動を始めるだけです。
波、風、雲、天気、紅葉の色など、自然界にはまったく同じことを繰り返すものはひとつもありません。変化こそがこの世界の本質です。
「完全に同じことは二度と起こらない」
私たちが本当に頼りにすべきは、この事実ではないでしょうか。
Photo by Satoshi Otsuka.
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