休むことに「恐れや不安」を感じていないか

今日は「休息」について考えてみようと思います。

平日の日刊でお届けしているこのブログですが、毎日のように繰り出される「本気を出す」「誰かの役に立つ」「手を抜かない」などの言葉から、「とにかく真面目にがんばる」というイメージをもつ人も少なくないでしょう。

けれども、拙著『グッドバイブス ご機嫌な仕事』でもこのブログでも、私は一度も「真面目」や「がんばる」を推奨したり、提案したりしたことはありません。試しに、拙著のKindle版とこのブログの全記事を検索してみましたが、どちらの言葉も逆説的な意味でしか使っていませんでした。

たとえば、拙著では「高いモチベーションもポジティブさも不安定で永くは続かない」としたうえで、「いい感じ」を次のように定義しています。

「心に恐れや不安がない状態」

けっしてアゲアゲではなく、何があってもフラットから下側には触れない「平安な心」を目指すということです。

「本気を出す」にしても、ワーカホリックや長時間労働ではなく、

「一瞬ごとに最大のエネルギーを注ぎ込む」

ことを指しています。

つまり、「いい感じで本気を出す」とは、

「心身ともにリラックスした状態で、いま目の前にあることに集中する」

ということであって、ある意味で緊張して肩に力が入った「真面目にがんばる」とは真逆に位置するものなのです。

そして、完全に脱力してリラックスした「平安な心」と、「いまここにフォーカスする」という両輪が揃うことで、私たちはもっとも優れた判断力と、最速かつ最高の能力を発揮できるようになると私は確信しています。

ここで忘れてはならないのは、そのような「最強モード」でいるためにも、

「休息を取ることを恐れてはいけない」

ということです。

たとえば、誰かに「そろそろ休んだらどう?」と言われて、「うん、そうしたいのはやまやまだけど、休んでいたら終わらないから」と答えたことはないでしょうか。期限や締切のことを考えると「睡眠時間を削ってでもやらなければ」と思ったことはないでしょうか。

もしこの次に、同じような場面に遭遇したときは、ぜひ自分にこう言い聞かせてください。

「いま私は、休むことに恐れや不安を感じている!」

かつて私も月刊雑誌の編集という、超過酷な現場で働いていました。運がよければ終電、午前2時、3時のタクシーはあたりまえ、始発に乗れればまだラッキーで、週に2日は会社に泊まる。そんな環境にいたので、「終わらないから休めない」という気持ちは痛いほどわかります。

けれども、「恐れや不安」に基づく「休まない」という選択が、結果として何をもたらすかは、このブログを読んでいただいているあなたなら、多くを語らずともわかるはずです。

遅かれ早かれ、次の2つの妄想が押し寄せてきます。

「この仕事によって私は何かを奪われている」
私はこの仕事の犠牲になっている」

ぜひ、このような思いを抱いているあなたと、先に書いた最強モード、すなわち「心身ともにリラックスした状態で、いま目の前にあることに集中する」とを比較してください。そして、「どちらでいることが、結果として仕事を早く終わらせられるか?」を冷静に検討してみてください。

休むことに不安を感じているとき、間違いなく私たちは「自我」に支配されています。バックナンバー「自分をもろくて儚い存在とみなす自我の正体」で書いたように、「自我」はなぜか自分を嫌っています。だから、休むという選択をせずに、自分自身を痛めつけようとするのです。

もし、「ああ、たしかにこのところ無理をしていたなぁ」と感じているなら、まさに今日から次の3項目を習慣にすることをおすすめします。
① 頭がスッキリして起きられる睡眠時間を知り、それを毎日かならず確保する。
② 空腹を感じたら、できるだけ早く仕事を中断して食事を摂る。
③ いまここに集中できなくなったら、迷わず休憩する。

「ご機嫌な仕事」にとって十分な睡眠時間は、なくてはならない大切なものです。どれだけ寝れば頭がスッキリするかは、変えることのできない個性のひとつです。

長いのはわるい、短いほどいいなどという正解はありません。書籍や他人の意見に惑わされることなく、あなたにとっての最適な時間を見つけてください。

「なぜか今日は意味づけや妄想が止まらない」と感じたら、真っ先に空腹でないかを確認しましょう。私も理由はよくわかりませんが、お腹が空くと「恐れや不安」に対する抵抗力が弱まる感じがします。「イラッとしたら腹ごしらえ」と思っておくといいでしょう。

最後に、何よりも自分の感覚を完璧に信頼することが重要です。それも「恐れや不安」のないフラットな自分の感覚です。「あ、疲れたかな?」と感じたら、ゆっくりと深呼吸をして、焦ったり、よけいな欲をもっていたりする自分を静めながら、

「そろそろ休むかい?」
「今日はもう終わりにするかい?」

と優しく自問してください。その瞬間に自分の中から返って来た答えに従えば、けっして間違うことはありません。