仕事と「好きなこと」の関係を見直してみる

今日は、「好きなことと仕事の関係」について考えてみたいと思います。

「好きなことを仕事にする」と聞くと、私たちはすぐに、あるジャンルの「プレイヤー」としてお金を稼ぐことをイメージします。スポーツならスポーツ選手、音楽ならミュージシャン、絵を描くことなら画家や漫画家、お笑いなら芸人、踊りならダンサーとして成功するということです。

当然、それは「狭き門」であり、「一握りの才能のある人」だけが立ち入ることを許される世界のように見えるため、自分を凡人と見る私たちは、早々に「好きなこと」を仕事から切り離して考えるようになります。

ではここで、次のことを自問してみてください。

「自分はこの一生で、心から好きだと思えることをいくつ見つけられるだろう?」

もちろんここでは、興味がもてる、関心がある程度ではなく、寝食を忘れて夢中になれるくらい好きなことに限ります。

そろそろ人生の終盤にさしかかった私の実体験を元に答えるなら、せいぜい2つか3つ、かなり幸運な人でも4つくらいが限度だと思います。そのくらい、自分の人生でめぐり会える「好きなこと」は貴重だということです。

ところが私たちは、ようやく見つけた「好きなこと」を仕事に絡ませないと決めるとき、この事実を軽視して次のように考えます。

「きっとまた、別の好きなことが見つかるに違いない」

けれども、本当は運命の人、最愛の人になれたはずのパートナーと軽々に分かれてしまうように、わずか3つのうちのひとつを捨ててしまっていては、別の「好きなこと」などそう簡単に見つかるはずはありません。

こうして私たちは、いつしか「自分の強みがわからない」「やりがいのある仕事に出会えない」といった、よくある悩みを抱えるようになるのです。

そこで、このような状況に陥らないためにも、「好きなことと仕事の関係」を大きく変えてみようと思います。

まずは、あなたの好きなそのジャンルにおいて、

「プレイヤーでないとしたらどんな仕事の可能性があるか?」

を想像してみてください。

たとえば、拙著『グッドバイブス ご機嫌な仕事』の早期購入特典でダウンロードできる補章、「好きのピースをあつめて自分の仕事を創造する」に、とてもユニークな営業マンの話があります。

彼は野球が好きで球団職員となり、もうひとつの「好きなこと」であるITの知識を駆使して、日本で最初のプロ野球ファンサイトを開設しました。これもまさに、野球という「好きなこと」を、プレイヤー以外の分野で自分の仕事にした好例だと思います。

そもそも、「好きなこと」だけで成り立つ仕事などありません。ひとつの仕事には、お金の計算、プロモーション、マーケティング、事務的な作業、チームの運営など、苦手であってもやならくてはならないことが無数に含まれています。

この営業マンのように、その中にひとつでもキラリと輝く「好きなこと」があるだけで、自分の仕事にもつ印象は大きく変わってきます。仕事全体を「好き色」で塗りつぶそうとするのではなく、仕事を構成するピースの中に「好きなこと」を盛り込む方法を模索するのです。

もちろん中には、

「いや、プレイヤーでなければその好きなことは色褪せる」

という人もいるでしょう。実は私と音楽の関係もまさにそうです。作曲家や編曲家、プロデューサー、レーベルの職員といった立場も考えたことがありますが、そのどれもが自分の情熱を最大限に注げるような仕事ではありませんでした。

このような場合には、プレイヤーであることにとことんこだわるべきです。ただし、「狭き門」や「一握りの才能のある人」といった固定概念を手放し、次のように捉え方を変えます。

「これで大金が稼げなくてもまったく問題ない!」

「仕事ではなく趣味にするのか?」というとそうではありません。あくまで、仕事として本気で「好きなこと」に取り組みます。ひとりでもあなたのやっていることに対して「ありがとう!」と言ってくれれば、それは立派な仕事とみなします。

「あなたがその好きなことをやり続けていること自体に価値がある」

と考えてください。生活に必要なお金は別の仕事で稼げばいいだけです。ここで得られる報酬はお金とは別のものです。

それは、あなたの人生をより豊にする何かかもしれません。あなたを元気にするエネルギーかもしれません。あるいは、他の仕事に多大な好影響を与えるインスピレーションの可能性も大いにあります。

ぜひ、「儲かることしかしない」という選択が、本当に私たちにしあわせをもたらすのかを真摯に自問してみてください。

プレイヤー以外の分野で仕事に結びつける道、報酬はお金だけではないと捉える道、少なくとも私たちが「好きなことを仕事にする」新たな方法が2つはあると私は考え、そして実践しています。

Photo by Satoshi Otsuka.