今日は「飽きる」ということについて考えてみようと思います。
私たちは何かをすることに飽きてしまうと、それを「つまらない」「つらい」「できればやりたくない」と感じるようになります。
もしあなたが、自分の仕事に対して同じような望ましくない思いを抱いているとしたら、まずはここ、
「仕事でやっているさまざまなことに飽きていないか?」
を疑ってみてください。
同じことの繰り返しだから、刺激がまったくないから、いつも同じメンバーと顔を合わせているからなど、あなたが「飽きる」理由はいくらでも見つかります。
少しでも新鮮味を感じられるようにと、そのような環境を変える工夫をするのもわるくないでしょう。けれども、仕事に向き合ううえでもっとも重要なのは、
「飽きたところから、自分の本当の仕事が始まる」
と、腹をくくることだと私は考えます。
たとえばあなたが、ローリング・ストーンズやボブ・ディランなどの、60年代から活躍するスーパースターの公演チケットを手に入れたとします。
おそらく、もっとも楽しみにするのは、「サティスファクション」や「ライク・ア・ローリングストーン」などの超ヒット曲でしょう。万が一、コンサート当日にそれらの曲が聴けなかったとしたら、あなたは大きく失望するはずです。
けれどもそれは、アーティストにしてみれば50年以上もやり続けているレパートリーです。もう「飽きる」などというレベルをはるかに超えた、題名を口にするだけでもゾッとするような、本当は二度と演奏したくない曲かもしれないのです。
そういえば、コメディアンの志村けんさんは、ある若手から「自分の芸に飽きてきたのですが、これからどうすればいいでしょう?」と質問されたとき、キッパリと次のように答えたそうです。
「芸人が自分のギャグに飽きちゃダメだよ」
いまだにバカ殿や「アイーン」を、なんの外連味もなく堂々とやりきる志村さんの言葉だけに、この話を知ったとき、私は理屈うんぬんを超越した重みと凄みを感じずにはおれませんでした。
拙著『グッドバイブス ご機嫌な仕事』では、仕事を次のように定義しました。
「仕事とは自分以外の誰かの役に立つこと」
言い換えるならば、誰かが自分に求める何かをやり続けるのが仕事ということでもあります。
この、
「自分に求めてくれることがある」
という事実の貴重さを忘れてはいけないと、いまでも「サティスファクション」を演奏するローリング・ストーンズや、往年のギャグを惜しみなく披露する志村けんさんは教えてくれているのではないでしょうか。
バックナンバー「迷いは世界とのつながりの中で再考する」で書いたように、「もう飽きた!」と言いたくなる私たちは、小さなカプセルに閉じこもって孤立した状態で悩んでいるのかもしれません。
ぜひそこから抜け出して、あなたが自分の仕事を手渡す人たちとのつながりの中で、「求めてくれることがある」ありがたさを再考してみてください。
頭で想像する世界と、実際に目撃する世界の姿はけっして同じではありません。
「それじゃあ、飽きた先の景色がどんなものか、ちょっと見てみようかな?」
と思える少しばかりの勇気と好奇心があれば、あなたにも、ロックのスーパースターや大御所芸人と肩を並べるくらい納得のいく仕事ができるはずです。
Photo by Satoshi Otsuka.
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