いまの仕事が「しあわせな役割」だとしたら

最近、私のまわりにいるフリーランスや個人事業主の人たちにこんな質問をしてみました。

「あなたがいまやっている仕事は、すべて自分の意志で選んだものですか?」

おもしろいことに、ほとんどの人の答えが「NO」でした。

「え? 自分で選んだのではないとしたら、どうやっていまの仕事に就いたの?」と、疑問に思うかもしれません。その答えも全員がほぼ同じで、

「誰かに頼まれたことをやっているうちに、自然といまの形になった」

というものでした。

私の場合などは、完全にこのパターンをたどっています。10代のころから、私が心から大好きで本当にやりたいと思う仕事は音楽でした。けれどもいま、仕事の中で多くの割合を占めるのは音楽ではなく、執筆やセミナー講師、パーソナルセッション、コンサルなどです。

さらにいえば、もともと私は本を書く気などこれっぽっちもありませんでした。処女作『すごいやり方』(扶桑社)は、共著者の大橋禅太郎氏から熱烈なオファーを受けて、やむなくお手伝いをしたような感じです。

ソロデビュー作の『iPhone × iPadクリエイティブ仕事術』(インプレス)も、編集担当の藤井氏から「ぜひ書いてほしい!」と強力にプッシュされ、半ば根負けしたような形で書き始めています。

コンサルタントやセミナー講師の仕事もまったく同じ流れで、すべてが私の思惑の外から来た依頼ベースで始まった仕事です。

そう、やはり私たちは、好むと好まざるとに関わらず、

「自分の役割に導かれていく」

のだと思います。

ではここで、あなたがいま携わっている仕事に注目してください。もしかしたら、「自分が本来いるべき場所はここではない」と感じているかもしれません。

そして、「だから、1日でも早く天職を見つけなければ」と、やや焦りを感じているかもしれません。

もちろん、その感覚や読みが的中していることもあるでしょう。でも、一度だけ立ち止まって次のことを自問してみてください。

「そうはいっても、いまの仕事を自分はうまくやれているんじゃないか?」
「あまり気に入っていない仕事なのに、なぜか自分にやってほしいと頼む人がけっこういるんじゃないか?」

もし、思い当たる節があるとしたら、それがあなたにとっての「しあわせな役割」である可能性は十分にあります。

とくに、「好きじゃないうえに苦手」ではなく、「それほど好きじゃないけどなぜか得意」だった場合は、その可能性がさらに増すと考えていいでしょう。

そこで、今日、あなたの仕事を始める前に次のことを試してみてください。

「いまの仕事に対してつけていた意味をすべて手放し、苦手な上司や同僚、部下などへの意味づけもすべて手放し、まっさらな状態でその仕事の本質を見直す」

そのうえで、ゲーム感覚で今日1日だけいまの仕事に「本気」で取り組んでみます。できれば、それによってあなた以外の誰がハッピーになったかもよく見ていてください。

「しあわせな役割」を見つけるためには、「何がやりたいか?」もかなり重要ですが、「あなたにそれを求めている人がいるか?」も同じくらい大きな指針になり得るのです。

Photo by Satoshi Otsuka.