割り込みが多くてやりたいことができない?

毎月、鎌倉の「朝食屋コバカバ」で開催しているワークショップ、「グッドバイブス ご機嫌な生き方塾」に参加いただいたMさんからこんな質問がありました。

「どうしてもやりたいと思って、以前から計画していることがあるのですが、予定外の割り込みが多くてなかなか着手できません。どうすればいいでしょうか?」

もちろん会場でも、共催の佐々木正悟さんとともにアドバイスを贈りましたが、さまざまなテーマを含むとてもいい質問なので、ぜひこのブログでも共有しておこうと思います。

まずはMさんの現状を把握しておきましょう。おそらく彼女はこの質問をしたとき、こんな感覚を抱いていたはずです。

「思いどおりに事が運ばなくてもどかしい。じれったい」

もしかしたら若干の焦りや苛立ちも感じていたかもしれません。

では、Mさんにこのような気持ちを抱かせている原因は何でしょうか。質問にあるとおり、「割り込みが多くてやりたいことができないから」と思うかもしれません。たしかにそのとおりなのですが、それでは何が問題なのかが見えてきません。

解決の糸口を見つけるためには、もう少し本質に切り込む必要があります。現実に起こっていることと、そうでないことを整理してみるのです。私の答えはこうなります。

「自分が計画したことと、現実とが一致していないから」

計画は「今日の午後からやりたかったことをやる」でした。ところが、現実に行ったのは「お客さんからの突然の依頼に対応する」ことでした。このギャップ、相違がMさんを悩ませているわけです。

実は、この問題はそれぞれを次のように捉え直すことで簡単に解決できます。

「計画はあくまで想像。実際に起こることこそ現実」

たしかに「やりたいこと」は大切です。それは私たちにとって夢であり、希望であり、生きていくための活力のようなものでもあります。けれども、未来の計画である以上、私たちの思惑どおりにいかないことは受け入れざるを得ません。

最大のポイントは、想像である計画と、現実に起こることとの折り合いをどうつけるかにあります。まずはこう考えてください。

「それをいつどのくらいの時間やれるかは、そのときにならないとわからない」

そのうえで、たとえ計画どおりに行かなかったとしても、「あ、今日はできなかったね」とあっさりあきらめて、また明日以降にそれが実行できる時間が来るのを楽しみに待てばいいだけです。

これだけで、焦りや苛立ちを覚える必要は皆無になります。

目標重視、ゴール重視をポリシーにしている人にとっては、猛烈に反論したくなるような発想かもしれません。それでもわからないものはわからないと認めるしかないのです。

もし、上記のように捉えたとしても、けっして「やりたいこと」が消えてなくなるわけでも、金輪際できなくなるわけでもありません。

さらに言えば、心の底からやりたいと思うことであれば、期限や進行速度などをあらかじめ決めておかなくても、実行できる時間が来れば、真っ先にそれに着手するはずです。

そして、この悩みを解決するもうひとつの鍵は、

「私たちにとっては、計画よりも、現実に起こることのほうがはるかに重要」

という事実を見落とさないことです。

私たちにはそれぞれ「役割」があります。自分でそれをはっきりと自覚している場合もあれば、他の人からの依頼によってそれを知ることもあります。

バックナンバー「本気と引力がしあわせな役割に導いてくれる」で書いたように、その両方がうまく混ざり合って、自分の個性に紐付いた「しあわせな役割」は完成すると私は考えています。どちらかだけではやはり不十分なのです。

「やりたいこと」は「こうなりたい」とほぼイコールです。おそらく、Mさんの場合も自分で自覚している役割を手に入れるために、「やりたいこと」を計画したのだと思います。

一方の「割り込み」と呼ばれているものは、ほぼすべて他の人からの依頼であるはずです。実際に、Mさんのお話に登場する「割り込み」も「お客さんからの突然の依頼」でした。

つまり、何かに割り込まれているときの私たちは、間違いなく、

「いま、あなたの役割を果たしてください!」

とリクエストを受けているということです。

しかもそれは想像や空想ではなく、紛れもない現実として私たちの目の前にいま、確実に存在しています。この事実をどう受け止めるかで、私たちの見る世界は大きく姿を変えることになるのです。

整理してみましょう。

問題の本質は「計画(想像)と現実のギャップ」でした。そして私たちはいつでも、単なる想像に過ぎない「計画」のほうを優先したがります。

そのため、「いま思いどおりになっていない」と憤りを感じ、それを引き起こした現実を「割り込み」などと呼んで、まるで厄介者のように扱おうとします。ところが、その正体はほかでもない、私たちに自分の役割を教えてくれる「他の人からの依頼」です。

もしそれが現実として自分の元に届いているとしたら、頭で「これをやりたい」と想像した実体のないものよりも、明らかに優先度が高いと判断するべきではないでしょうか。

これが私の答えです。会場でMさんに送った言葉を少しだけ脚色して書いておきましょう(笑)。

「焦る必要も苛立つ必要もありません。Mさんは現実として、立派に自分の役割を果たしているだけのことです。計画は想像です。そんなものはいったん手放して、また翌朝に再生すればいいと思います。やりたいことは消えたり逃げたりしません。それができる時間が来たときに、安心して腰を据えて着手してください」

そういえば、別の方の「それでも何とか時間を捻出できないものか?」という質問に対して、タスクシュートのプロである佐々木正悟さんはこう答えていました。

「そのような時間はゼロです」

参加者のみなさんは、この一見、厳しい回答に、なぜかホッとした笑顔を浮かべていました。そう、安心していいのです。現実とかけ離れた詰め込みすぎの計画など、実行できないのが「あたりまえ」だからです。