会社の方針が「ご機嫌」でないときの対処法

拙著『グッドバイブス ご機嫌な仕事』では、仕事を次のように定義しました。

「仕事とは、自分の個性から導き出された役割に沿って、この世にない新しいものを創り出し、それを誰かのために役立てること」

それはすなわち「この世界のしあわせの総量を増やす」ことができる、すごい機会だということです。

このように仕事を捉えたとき、私たちが考えること、行うことはとてもシンプルかつ具体的になります。

「どうすれば、自分の仕事を受け取る人たちのしあわせを増やせるだろうか?」

企画であろうと営業であろうと、徹頭徹尾、このことに注力すればいいだけです。

ただ多くの人が、実際の職場ではそのような発想で仕事をすることが難しいと感じているようです。その理由はおおよそ、次のような言葉で語られます。

「会社は利益優先で顧客のことは二の次。中長期の事業計画やノルマも決まっていて、まずは数字を作るしかない。誰かの役に立つとか、しあわせを増やすとかを考える余地はない」

そこで今日は、「ご機嫌な仕事をしたい自分」と「そのような考えに反する会社の方針?」とのギャップをどのように解消すればいいかについて考えてみたいと思います。

まず、話をややこしくしないために、目的を共有しておきましょう。冒頭に挙げたような捉え方で仕事をするのは、

「ひとりの仕事人として自分自身がしあわせに働くため」

です。

極端なことを言えば、会社に100人のスタッフがいたとして、あなた以外の99人が「お金さえもらえればそれで十分。客のことなど知ったことではない。言われたことだけやってとっとと帰るのが得策」と考えていたとしても、あなただけは別の思いを抱いて仕事をすればいいということです。

ここにはたった2つの選択肢しかありません。

① 仕事からしあわせを得たいか。
② そんなものは最初から期待しないか。

のどちらかです。

後者を選ぶのなら、他の99人に同調してうまくやればいいでしょう。もし前者を選ぶと決めたら、会社の方針がどうであれ、他の人の働き方がどうであれ、それこそあなたの知ったことではないはずです。

「思い」はあなたの心の中だけにあります。どれだけ大きな権力をもつ人であってもそれを無理やり変えることはできません。万が一、「君は顧客のことを考えすぎだ!」と怒られたら、「あ、そっすか。すいませんw」と笑ってごまかしておいて、またいつものようにやればいいだけです。

次に、あなたがしているかもしれない「意味づけ」に気づくことです。ぜひ、次のことを頭に入れておいてください。

「自分が所属する組織はバッドバイブスに見えるもの」

理由は単純なものから複雑なものまで、挙げればキリがありません。

そもそも組織とはそれ自体が生き物のようなものです。だとすれば、私たち自身がそうであるように、自らの存続が脅かされることに「恐れや不安」を感じないはずがありません。

そして一般的に、上層部であればあるほどそのような恐怖が強くなっていくことは容易に想像できると思います。その結果、経営陣から発信されるメッセージに「利益重視」や「目標数値の達成が最優先」を色濃く感じてしまうのもごくあたりまえのことなのです。

ここで、「自分は正しい」というスタンスに立つ前に、あなたの「意味づけ」を疑ってください。「意味づけ」とは、

「そうでない可能性があるにも関わらず、そうであると結論づけること」

です。

そもそも「会社」には意志などありません。意志をもっているのはそこに属する人たちです。あなたが「会社は利益優先で、顧客のことは二の次」と判断したとしても、上層部のすべての人間がそう確信しているとは限りません。

「我々はなんとかして組織の存続を守る。だから、あなた方はより顧客に役立つサービスを生み出してくれ!」

そんな思いを抱いている人がいる可能性はゼロでしょうか。それを確かめる術がないとしたら、「本当のことはわからない」と受け入れて「意味づけ」を手放すほうが、あなたの選択肢は増えるはずです。

まとめてみましょう。まず、あなたが「ご機嫌な仕事」を実現したいと決めたなら、他人や周囲の環境に左右されることなく、それを貫けばいいだけです。

次に、「会社の方針」という「意味づけ」によって現実を固定しないことです。どうしても、あなたがやろうとすることと、会社の望むことに乖離があるように感じるなら、あなたには「翻訳者」の役割が与えられていると思ってください。

あなたが顧客に役立つことを考えて何かの企画を発想したら、「それがどれだけ利益に貢献するか」という組織の言葉に翻訳して伝えればいいだけのことです。そして多くの場合、「役立つ」と「利益」が矛盾することはありません。

バックナンバー「まわりにいるバッドバイブスな人への対処法」でも書きましたが、「恐れや不安」に基づく選択をする人はあなたに愛を求めています。翻訳、すなわち伝え方を考慮することもまた愛の選択だと私は思います。

組織であろうと人であろうと、誰ひとりとして敵とみなさない、分離の意識をもたないのがグッドバイブスの真髄です。

すでに書いたように、すべては自分自身のためにやることです。けれども、もしあなたが「この組織全体をご機嫌に変えたい!」と思うなら、焦らずゆっくりと愛をもって、けっして揺らぐことのないグッドバイブスを伝播させていってください。

結果はどうあれ、そのようなプロセスを経験することもまた、ひとりの仕事人としてのあなたに大きな恩恵をもたらすと私は確信しています。