理想の自分を描かず、理想の言動を選択する

今日は「理想と現実のギャップ」について考えてみようと思います。

たとえば、私たちの多くは「理想の自分像」をもっています。10年後にそうなっていたいと思うこともあれば、1日も早くそうなってほしいと願うこともあります。

さらに、その「理想の自分像」をいまの自分と比較して、

「どうして、思うような自分になれないのだろう」

などと深い悩みを抱えることもめずらしくありません。

では、私たちはどうやってこのような「理想と現実のギャップ」を埋めればいいのでしょうか。

まず、バックナンバー「トレンドの価値観に惑わされずに自分を描く」で書いたように、

「私たちが頭で思い描く自分の理想像は、多くの場合さまざまなノイズによって歪められている」

という事実を認識することです。

「こうなりたい」と思う自分が、かならずしもあなたの進むべき道とは限らないからです。

次に、同じくバックナンバー「余裕を求めると何かが足りないと感じる」にあるように、多くの場合、

「私たちはいまの自分を低めに評価しがち」

という不思議な傾向についても、しっかり自覚しておきます。

これによって、ノイズにまみれた「理想の自分」と、正当に評価されない「現実の自分」の両方の信憑性がきわめて怪しいことに気づけます。

つまり実際には、

「理想の自分も現実の自分も、同じように幻想に過ぎない」

ということです。

もちろん、幻想と幻想を比較することであなたが感じている「ギャップ」も、まさしく単なる幻想に過ぎません。

頭だけで遠い未来の自分の姿を予測したり、何かに影響されて「こうなりたい!」と考えたりすれば、私たちは必然的に幻想と幻想の狹間から生まれるさらなる幻想に悩まされることになるのです。

その代わりに必要なことは、

「リアルなものを頼りに自分を高めていく努力」

にほかなりません。

たとえばそれは、現実としてあなたが行う言動であったり選択であったりします。もし、あなたが「理想の自分像」を思い浮かべたなら、最初の選択は次のようなものであるべきです。

「自分はこうなりたいではなく、自分はすでにそのような人物であると確信する」

根拠などまったく必要ありません。あなたが自分をどう捉えるかだけの問題です。「いつかそうなる」ではなく、いまこの瞬間に「そうである」と決意するのです。

この固い決意が、「いまどんな言葉を発するべきか?」「いまどんな行動をとるべきか?」をあなたに教えてくれる最高の指針となります。

いつでも、次のように自問してください。

「自分がすでにそうであると確信する人物なら、何をしゃべり、何を行うか?」

これによってあなたは毎分毎秒、「理想の発言」や「理想の行動」を選ぶようになるはずです。

もし、そうでない言動を選択したとしても、何がそうさせたのかの修正点を探り、次の機会に再チャレンジすればいいだけです。ここにおいては、これまであなたが感じていた「ギャップ」が、いつでも修正可能なただの課題に変わります。

こうして「いまここ」に自分の理想を刻んでいけば、あなたがとおった道には「こうしたかった」ではなく、「たしかにそうした」というリアルな足跡だけが残っていきます。

当然ですが、そこには幻想の「理想の自分」など存在しません。あるのは、いつでも胸を張って誇れる「現実の自分」だけです。

Photo by Satoshi Otsuka.