他人と比べれば個性はどんどん薄らいでいく

「自分の個性に合った仕事を見つけたい!」「自分の強みを発見したい!」と思うとき、私たちはつい、それらを他人との比較の中で探そうとしがちです。

「私のこの部分は他の人よりも秀でているかもしれない」
「私のこの能力を使えば、他の人よりも有利に物事を運べるかもしれない」

とても残念なことに、人と比べればくらべるほど、私たちの個性は厚いベールに覆われ、どんどん見えにくくなってしまうのです。

たとえば私は仕事として音楽を奏で、文章を書いています。どちらも私の大好きなことであり、それぞれに必要な能力は私にとって大切な個性だと確信しています。

でももし、そのことに気づいたときに、こんなことを考えてしまったとしたらどうでしょう。

「音楽も執筆も大好きだけど、まわりを見渡してみると、自分よりすごい人は山ほどいる。これはただ好きというだけで、本当は自分の個性や強みとは言えないんじゃないだろうか……」

おそらく、そっと楽器と鉛筆をしまい、もっと「誰よりも秀でている」と確信できる別の分野を探し始めることでしょう。

なぜそうなってしまうかの理由はとても単純です。

「自分と他人を比較すると、自分に不足しているものに目を奪われてしまう」

という、不思議な特性を私たちがもっているからにほかなりません。

そうして私たちは、けっして終わることのない「自分の不足を補う」旅に出てしまうのです。もちろん、その旅を続けている限り、自分の個性など見えるはずがありません。

なぜならば、

「個性とは生まれながらにもつ、とんがりと不足のハーモニー」

だからです。

さらに、個性とはダイアモンドの原石のようなものだと私は考えます。原石は磨けばみがくほど輝きを増します。当然、あなたより早く自分の個性を発見し、それを磨き始めた人のダイアは、あなたの原石よりも美しく見えるでしょう。

けれどもその輝きは、あなたの原石を磨くことで発するようになる光とはまるで別のものです。

ひとりの人間の中にそれほど多くの原石は眠っていません。そのカケラをひとつでも見つけたような気がしたなら、ぜひ、他人と比べることなく大切に磨き始めてください。

真の比較対象は「以前のあなた」です。そして、気に留めておくべきは、あなたの中の原石がどれだけ輝きを増したかだけです。「他人」という物差しなど使わなくても、あなたは公平に完璧に自分自身をジャッジできるはずです。

Photo by Satoshi Otsuka.